藤田菜七子の電撃引退騒動で大揺れの競馬界だが、走る方の女子たちは元気一杯。ということで、3日間開催の最終日は、根強い人気の牝馬限定重賞「アイルランドトロフィー府中牝馬S」が東京競馬場の芝1800メートルで行われる。
残念ながら、来年からは「府中牝馬S」の名称が外され、シンプルに「アイルランドトロフィー」となる予定だ。「東京牝馬特別」に始まり「牝馬東京タイムス杯」、そして「府中牝馬S」と細かく名称を変えながらも、常に牝馬限定の名レースとして看板を背負ってきた。それだけに「牝馬」の文字が外されることは、往年のファンは寂しさを覚えるかもしれない。
しかし馬券は寂しいどころか、近年アツくなっているのがこのレース。一時の堅め決着から、ここ4年間は3連単の平均配当が12万円を超えている。それ以前とここ数年ではどういった変化があったのか。
関東在住の馬券師ライターT氏は、馬券に絡む馬の臨戦過程が変わったと指摘する。
「時期や条件の変わらない牝馬限定重賞だけに、出走馬のレベルに極端な変化はないでしょう。しかし2014年から2019年の、馬券になった(3着以内)馬たちの前走と前々走と、2020年以降のそれとではガラッと違う。これが荒れているポイントと言っていいでしょう」
T氏の指摘によれば、2014年から2019年の6年間で3着以内に入った18頭の前走、前々走となる計36レース中、23レースが「牝馬限定」だった。その割合たるや、およそ64%だ。
一方、この4年間の12頭に関する24レースでは、牝馬限定は7レースだけ。約29%まで下がっている。T氏が解説する。
「数年前までは5月のヴィクトリアマイル(東京)、8月のクイーンS(札幌)、このあたりの牝馬限定路線を経由してやってくる馬が、実力通りの人気を背負ってそれなりに走るレースでした。配当的に荒れなかったのは、それが理由です。ところがこの4年間は、前走や前々走が関屋記念、札幌記念、エプソムC、小倉日経オープンと様々で、そのほとんどが牡馬との混合レース。それだけに、馬柱の着順に見映えがしない馬が多い。なので人気は落ちていますが、立て続けに牡馬とのタフなレースで揉まれてきたことで、揉まれ弱い牝馬が集まる限定レースであっさり激走する。それが高配当を生んでいる要因ですね」
今年の出走は15頭。出走馬の前走、前々走を眺めてみると、30レース中で18レースが牝馬限定だ。これらが全て消えるということか。T氏が苦笑する。
「いやいや、全部消えたら馬券が成立しません。ですが、本命は一発でわかるでしょう。前々走で準オープンの牡牝混合レースを勝ち、前走の関越Sで1番人気ながら9着に敗れたアスコルティアーモしかない。この馬だけが2走とも牡馬と走っています。過去8戦で馬券にならなかったのは前走だけなのに、人気が急落している。まさに最近の府中牝馬Sにピッタリです。反対にマスクトディーヴァとブレイディヴェーグは、斤量のわりに人気が盛られすぎだと思いますね」
確かに、ブレイディヴェーグが背負う57キロで、このレースで馬券になった馬は過去に1頭もいない。とはいえ、アスコルティアーモ1頭では荒れる馬券は成り立たないが…。
「当然、馬群が揉み合いになるだけに、タフなレースになる。過去、多頭数出走のケースで馬券になったのは、前走で牡馬と走っていたのが圧倒的。そう考えると、コスタボニータ(前走・小倉記念)、シンティレーション(同・新潟日報賞)、セントカメリア(同・小倉記念)、フィアスプライド(同・安田記念)、モズゴールドバレル(同・札幌記念)、ルージュリナージュ(同・エプソムC)の6頭から相手が出るでしょう。コスタとフィアス以外は人気が全くないし、あと1頭は牝馬限定戦から来る実力馬を押さえで入れても、3連単は余裕で10万円は超えるんじゃないですか」(T氏)
なんと馬柱を見ただけで馬券を構築できる、最新カンタン馬券術だ。3連休の締めは屈強な男に揉まれてきた女子たちの激走で、ガッツリ儲けようではないか。
(宮村仁)