4月14日に中山競馬場で行われたGI・皐月賞(芝2000メートル)。3歳クラシックの第1関門となる同レースには、牝馬のレガレイラが1948年のヒデヒカリ以来、76年ぶり史上3頭目となる「牝馬V」を目指して殴り込みをかけ、並み居る牡馬らを尻目に堂々の1番人気(3.7倍)に推された。
レースはメイショウタバルが玉砕的とも言える大逃げを打ち、前半1000メートルの通過タイムが57.5秒という記録的なハイペース。超縦長でレースが流れる中、ジックリと後方に構えるレガレイラには絶好の展開になったかに見えた。
ところが、持ち前の「鬼脚」は不発に終わり、結果は人気を裏切るまさかの6着。レース後、鞍上の北村宏司も「最後は苦しい感じの伸びになって…」と首をかしげた。1番人気を背負ったレガレイラはなぜ馬群に沈んだのか。
実はレガレイラのような「差し、追い込み馬」には2つのタイプが存在する。
第一に、スローペースのレースで末脚を生かすタイプ。つまり、ヨーイドンとなる最後の直線で、鋭い切れ脚を繰り出すもので、この場合、スローペースゆえ、レースの上がりタイムはおおむね速くなる。
一方、第二のタイプは、ハイペースのレースで末脚を生かす。つまり3コーナーあたりからジリジリと長くいい脚を使い、最後の直線でもバテずに脚を伸ばしてくるタイプであり、この場合、ハイペースゆえ、レースの上がりタイムはおおむね遅くなる。
歴代の名馬の中には、第一の特性と第二の特性を兼ね備えたタイプもいる。あまりにも能力が突出しているため、どんなペースだろうが、どんな展開だろうが、他馬を捻じ伏せてしまう。近年の牝馬で言えばアーモンドアイがこれに該当するが、大半の差し、追い込み馬は第一か第二のどちらかのタイプに属するのだ。
翻ってレガレイラの戦績を振り返ると、前々走のアイビーステークス(リステッド、東京・芝1800メートル)も、前走のホープフルステークス(GI、中山・芝2000メートル)も、スローペースのヨーイドンを制しての勝利だったことがわかる。
ところが今回の皐月賞は、超のつくハイペース。つまり、レガレイラは第一のタイプに属する差し、追い込み馬であり、ハイペースには対応できない馬である可能性が浮上してくるのだ。
今回の敗因はほかにもあるかもれないが、「レガレイラはスローペースから平均ペースのレースでこそ、その鬼脚を爆発させる」という教訓は、今後の馬券作戦を考える上でも、記憶しておいて損はないはずである。
(日高次郎/競馬アナリスト)