馬券を買う上で騎手は重要なファクターだが、厩舎も見逃すことができない。リーディングの上位に立つ厩舎は信頼度が高く、常にマークしておく必要がある。
そのリーディングで現在5位にいるのが、開業して5年目の上村洋行調教師(栗東)。26勝して連対率32.4%という好成績だ(8月6日現在)。20馬房という決して多いとは言えない規模でこれだけの成績をあげているのだからたいしたもの。
その凄さは年度別成績を見るとよくわかる。2019年10勝→20年19勝→21年25勝→22年32勝と、着実に上昇カーブを描いているのだ。重賞勝ちは今年スプリングステークスを勝利したベラジオオペラ1頭だけだが、今後活躍馬が増えていくのは間違いないだろう。
トラックマンが語る。
「正直、ここまでいい成績をあげるとは思っていなかった。厩舎を開業するまでの1年間、技術調教師として名伯楽・角居勝彦調教師の下で修業を積んだのが良かったのだろう。あそこには岸本教彦という優秀な調教助手がいて、開業すると同時にスタッフに加わったのも大きい。馬を仕上げることに関してはピカイチと言われていますからね」
好成績の要因はまだある。上村氏自ら調教で1日3頭ほど騎乗し、馬の調子や変化を感じ取っているのだ。さらに逍遥馬道(木々に囲まれ、アップダウンのある場所を歩く道)を利用して足腰の鍛錬もしている。栗東トレセンの中でも準備運動にかける時間が最も長いと言われ、それも好結果をもたらす一因となっているようだ。
最終的に結果を出すのは騎手なので、誰を乗せるかも重要だ。現在、最も勝ち鞍をあげているのは坂井瑠星騎手で、26勝中9勝をあげている。彼は現在リーディング7位だが、そこからも分かるようにリーディング上位の騎手を多用しているのが大きな特徴。その中には美浦所属の横山武史&横山和生の兄弟もおり、前述のベラジオオペラなどの有力馬に起用している。
こうした騎乗技術に長けた騎手に乗ってもらえるのも、年々成績を上げてきたから。厩舎の中身が完成するのは大概5年かかると言われるが、上村氏はそれをすでに成し遂げていると言っていいだろう。今後が楽しみだ。
(競馬ライター・兜志郎)