いよいよ球春到来。まだキャンプインしたばかりだが、早くも各地で春の嵐が吹き荒れている。地獄耳で情報を集めると、手始めにスーパースターの争奪戦で不穏な空気が流れているというではないか──。
「去年は悔しい終わり方をしたが、ゼロからのスタート。このキャンプで体を仕上げて、日本一奪回へ頑張ってください」
2月3日、昨年に引き続き、巨人OBの松井秀喜氏(40)が宮崎キャンプに足を運び、チームを激励した。とはいえ、この日を迎えるまでにはさまざまな駆け引きが繰り広げられていたという。球界OBが明かす。
「松井は昨年、臨時コーチとして巨人のキャンプに参加しましたが、結果的に松井ばかりが話題の中心となってしまったことを気にしていました。そのため、今年は訪問に乗り気でなかったのですが、巨人はあくまで臨時コーチという立場で来てくれるよう粘り強くオファーを出し続けていたんです」
それでも松井氏の気持ちは揺らがなかった。交渉が平行線となる中、巨人の新人時代に2年間、打撃コーチとして指導された、DeNAの中畑清監督(61)からも沖縄・宜野湾キャンプに来るよう熱烈なラブコールを受けていたのだ。
「DeNAに行く分にはしがらみもない。中畑監督の熱意に応えるため、松井はキャンプの視察を受諾したんです。ただし、DeNAにだけ顔を出して巨人をソデにすれば、よからぬ憶測を呼んでしまうでしょう。そこで巨人に対しても視察という形での訪問を了承したんです」(球界OB)
巨人が臨時コーチとしての招聘にこだわったのは、将来、指導者として復帰することを前提としていたからだ。それだけに巨人サイドは落胆したという。
火に油を注いだのは、1月29日にDeNAが勇み足で1度は「臨時コーチ」と発表したことだった。すぐに訂正されたが、収まらなかったようだ。
球団関係者が言う。
「そもそも巨人は今季キャンプの目玉に乏しく、松井の視察をギリギリまで発表せずサプライズとして演出したかったというんです。にもかかわらず、DeNAが発表したことで、前倒しで公となる形になってしまったうえ、二番煎じの印象すら拭えなくなった。松井の監督就任も諦めムードとなり、DeNAに八つ当たりで、球団内から『ルール違反だ』とか『紳士協定を破った』といった見当違いの恨み節まで聞こえてきたほどです」
一方のDeNAは高笑いだ。休日を挟んだとはいえ、松井氏は巨人の2日間より長く、3日間の滞在となった。しかも宜野湾では7日、宮崎では行われなかった、松井氏のフリー打撃が実現したはずだ(締め切り時点では発表のみ)。特に筒香嘉智(23)や梶谷隆幸(26)といった、主力左打者には大きな財産となっただろう。
昨季、セ・リーグで唯一巨人に勝ち越したDeNAが巨人に“前哨戦”でみごと赤っ恥をかかせた形だが、これを中畑監督の原辰徳監督(56)に対する強烈なライバル心と見る向きもある。
「就任以来、中畑監督は巨人戦では原監督と目も合わせません。試合前も敵将がグラウンドからいなくなるまでベンチを出ず、番記者に『いなくなったか?』と確認してから動くほど徹底しているんです。現役時代、2人の不仲を報じる記事が書かれたこともあるんですが、中畑はその記事を原のところまで持っていき、『こんなの出てるけど、悪いけど全部事実だぜ』と言い放ったとの話までありますからね」(スポーツライター)
松井氏を口説き落とした中畑監督の執念が早くも今季の因縁対決をさらに盛り上げている。