昨年のキャンプ初日に栗山監督が「バカヤロー」と大谷を叱ったが、これはまさに、肉体の成長によってフォームバランスが崩れていたことが理由だった。打撃よりも投球でのフォームバランス調整のほうが格段に難しい。こうなるとどうしても浮上してくることがある。そう、「二刀流終焉の日」である。
昨オフ、「報道ステーション」(テレビ朝日系)での田中将大(26)との対談で、ダルビッシュ有(28)がこんな懸念を表していた。
「(二刀流は)本人がメジャーに行きたいと思った時は必ず足を引っ張ることになる。二刀流では絶対にメジャーに行けないじゃないですか。本人のことを考えるのであれば、日本ハムは(投手か打者かに)しぼらなければいけないというふうにはずっと思っています。打者か投手か。投手ですよ。NO1になれる可能性があるとしたら、投手なので」
近い将来のメジャー行きの夢を口にしている大谷。事実、昨秋の日米野球で来日したメジャー関係者やスカウトのほとんどが「メジャー移籍なら投手としての大谷。野手との二刀流は100%ありえない」と断言した。スポーツライターも言う。
「全米を率いたファレル監督からも『どちらかにしぼったほうがいい』とアドバイスされ、メジャー中継をよく見ている大谷はこうした助言に耳を傾けている」
高額の契約を結ぶメジャーでは、打撃を行うことによるケガのリスクを嫌うという事情があるのだ。
実は球団と大谷の間には、入団時に「密約」が交わされたとの説が根強くささやかれている。すなわち、タイミングを見てポスティングによるメジャー移籍を認めるというものだ。そうなると、メジャー挑戦前に手遅れにならないうちに、投手一本にしぼっておかねばならない。
だが、その一方で、「野手・大谷」に関しては、ほぼ放置していたというチーム実態もある。ある関係者は「打撃は遊んでいるだけ」とも言う。
こうして現実化する矛盾は何を表しているのか。先の江川氏や球界OBの「筋肉論」でもわかるとおり、今季、野手として試合出場を増やす大谷がどれだけの数字を残すかにもよるが、勝てば勝つほど、打てば打つほど、二刀流終焉の日が近づくことになるのだ。球団関係者は厳しい口調で言う。
「球団と栗山監督もその日が来ることを念頭に置いています。今季終了までには、投手か野手のどちらかにしぼるつもりでいますが、投手へと方向づけすることになるだろう、というのが球団と栗山監督の総意です」
だが、それは大谷にとっては本意ではない。
「大谷のモチベーションを支えているのは二刀流です。投手として打たれても、中6日の次の試合を待つことなく、すぐに野手として打席に立って取り返すことができますからね。もし二刀流をやめろと言っても、本人が納得するかどうか。そこはチームの火種になるかもしれませんね」(カメラマン)
「20勝+20発」の偉業に近づけば近づくほど、「Xデー」は迫ってくる。今年は大谷にとって、二刀流の分岐点となる重大なシーズンなのである。