現地時間10月15日にニューヨークで発売が開始された、MLBワールドシリーズ(以下、WS)の、ヤンキースタジアムの高額チケット。普段のリーグ戦チケット料金からしてメジャー最高額のヤンキースだが、さすがにWSとあって、日本人の一般感覚では「手が出ない」シロモノとなっている。
シーズンチケット権利者に先行発売されていることが入手困難になっている理由のひとつだが、最も安い外野席のアッパーデッキが約13万円と聞けば、驚くしかない。
過去のヤンキースタジアムのWSチケット代より大幅に高額設定されていることで、対戦の可能性があるドジャースの「大谷翔平効果」だと、日本国内の各メディアは書き立てている。これは事実なのか。ニューヨーク在住のスポーツライターが現地の声を実際に見聞きし、説明してくれた。
「ヤンキースタジアムのWSチケット代の最安値が、まさかかつての2.5倍に設定されたことには驚きました。でもそれが売れている最大の理由は2009年以来、15年ぶりのヤンキースのチャンピオンが見えているからです。実現すれば、WS出場自体が2009年以来ですからね。つまり相手云々ではなく、まずはヤンキースの優勝を見たいから。SNS上の声をまとめても、それが最大の理由です。現状、2番目として挙げられるのは、相手が同じニューヨークのメッツの可能性があること。ファンの人数はヤンキースの方が多いですが、阪神タイガース的な熱ならメッツファンの方が激しい。サブウェイシリーズと呼ばれるこの対戦がWSで実現すれば、なんと24年ぶり。次にいつ見られるかわかりませんし、全試合を見に行くと宣言しているニューヨーカーが結構います」
つまり、ヤンキースタジアムのWSチケット争奪戦はストレートに「ヤンキースの優勝を見たいから」というのが圧倒的な理由であり、ニューヨークの2チームがリーグチャンピオンシップに残っていることがさらに拍車をかけているのだ。では日本で騒いでるほど、大谷効果はないのか。このスポーツライターが続けて解説する。
「いえいえ、ドジャースという西海岸の最大チームとやる東西対決を楽しみにしている人はいますし、高額設定された理由ののひとつが大谷だと考えていい。メッツになろうがドジャーズになろうが、売れるという判断でしょう。しかし正直に言うと、日頃から西海岸のチームを気にしているヤンキースファンは、熱烈な野球マニアだけ。日本の野球ファンと違い、一般のファンは他球団のことには本当に疎いですからね」
だがこれには「少し困った話」があるという。スポーツライターがさらに言う。
「もしドジャースが対戦相手になった場合、日本人に高額転売できるという話が、SNSではチラホラ聞こえています。もちろん、大谷はドジャースの選手の中で最も注目されていますが、ドジャースの場合はニューヨークでは第3戦から第5戦の3試合しかやりませんから(メッツの場合はヤンキースタジアムで4戦開催)、せっかく入手した先行チケットが払い戻しになってしまう。ニューヨークのファンにとっては痛し痒しといったところでしょう」
ちなみに、日本のメディアが注目するジャッジと大谷の本塁打王対決に関しては、野球メディアは別として、日本人が思っているほどニューヨークのファンは興味を持っていないのが実情だという。
「大谷がヤンキースタジアムの打席に立てば、ブーイングが起きるでしょう。しかし今の段階で、ジャッジと大谷の『対決』とみているニューヨークのファンはほとんどいません」(前出・スポーツライター)
とはいえ、対戦が実現すれば、なんと43年ぶり。さらに大谷とジャッジという最もユニフォームを売るツートップが直接顔を合わせ、しかも50本塁打以上打ったスラッガーが両チームにいるWSは史上初となる。
どこを切っても大きな話題にしかならない対決だけに、むしろ「最強のライバル」ヤンキースを迎えるロサンゼルスのフィーバーぶりの方が、とんでもないことになるのかもしれない。
(田村元希)