昨今、訪日観光客の急増に伴い、「白タク」の運行が問題視されている。福岡県福岡市の博多港ではこの10月、「白タク」行為を行ったとして、中国人グループが福岡県警に逮捕されていたことが、捜査関係者への取材で明らかになった。
逮捕されたグループの一員は、SNSを通じて車の提供者や運転手を集め、利用者の依頼に応じて違法な乗車サービスを展開していた。
熊本県八代市の八代港周辺でも白タクが頻繁に目撃されており、熊本県警は取り締まりを強化しているが、現場での監視や摘発には困難が伴う。熊本県警は引き続き監視体制を強化し、白タク行為の根絶を目指すとしている。
九州地方、とりわけ福岡や熊本における「白タク」急増の背景には、「地方特有のタクシー事情が影響している可能性がある」と、九州を拠点に活動するジャーナリストが指摘する。
「福岡、特に博多ではタクシーの運転手不足が深刻で、外国人の乗車を拒否する運転手が多くいます。その理由のひとつとして、近場でしか利用されないことや、スーツケースで車内が汚れることが挙げられます。中には地元客しか乗車させないために、アプリを切って営業する運転手もいるほどです」
東京などの都市部とは異なる、地方のタクシー利用文化が影響しているのだ。地方では地元の常連客が日常的に利用する「お抱えタクシー」としての利用が根強く、運転手にとっては毎回利用してくれる地元客を乗せる方が売り上げが安定する。そのため、近場でしか利用しない観光客よりも好まれる傾向にある。
一方、熊本では熊本市電という路面電車が市内の主要なエリアを網羅しており、タクシーが停車できる場所が限られる。こうした状況に不慣れな外国人観光客にとって、よりアクセスが簡単な白タクを選ぶことになるのだろう。
白タクの増加は単なる需要の高まりだけでなく、地元のタクシー業界の事情も関係していると考えられる。地元の常連客を重視する地方特有のタクシー運行の慣習や、外国人観光客への対応には、依然として多くの課題が残っているのだ。