「マイコプラズマ肺炎」の患者が急増している。東京都では9月時点で1999年の統計開始以来、過去最多の報告数となった。これまでは、発症者の約8割が14歳以下と若い世代の感染が多い病気ではあったが、今シーズンは大人の感染者の報告も多い。特に大人が発症すると症状が重くなるケースが多いので十分な警戒が必要だ。
一般的には「マイコプラズマ肺炎」に感染しても、気管支炎の軽症のまま自然治癒することが多い。しかし、心筋炎や中耳炎、胸膜炎などの合併症を引き起こしたり、肺炎球菌、インフルエンザの混合感染により、入院が必要になるほど重症化するケースもある。
「マイコプラズマ肺炎」は、肺炎マイコプラズマという細菌によって感染する呼吸器系の感染症。肺炎球菌による肺炎とは異なり、発熱、全身のだるさ、頭痛、乾いた咳など風邪と似たような症状を発症する。熱が下がっても、咳が数週間止まらなければ「マイコプラズマ肺炎」の可能性が高い。
感染経路は、一般的な風邪やインフルエンザと同じで飛沫感染と接触感染だ。発症までの潜伏期間が2~3週間と長めのため、感染に気づきにくいところも厄介な点である。
治療法は、解熱剤や咳止め薬、抗菌薬(抗生物質)が処方される。しかし、自然治癒することが多いため抗菌薬が処方されないケースもある。現在、マイコプラズマに有効なワクチンは開発されていないので、手洗い、消毒といった他の感染症と同じような対策で予防する以外ない。感染した場合は、家族間ではタオルの共用を避けたり、咳が出る場合はマスクの着用を心がけるなどして、感染の拡大防止に努めたい。
免疫力を高めて流行の本格シーズンに備えよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。