日本各地で伝承される「妖怪」民話は「河童=土砂災害」が示すように、自然災害を妖怪にたとえて語り継がれたものが多い。その証拠に、妖怪民話が残る地域が、ハザードマップでは被災想定地域であるケースが目立つことが、近年の研究で明らかになっている。
海外に目を向ければ、アメリカ各地にも、そのテの不思議な伝承は残っている。中でも複数の地域で異なる出生伝説を持つ、不思議なUMAに着目したい。それは「メロンヘッド」と名付けられたもので、頭部が肥大化した、一見して人間の子供のような化け物だ。
メロンヘッド伝説はミシガン州、オハイオ州、コネチカット州にまたがる。ミシガン州のそれは、医師から残酷な虐待を受けた、収容所の子供たちが森に捨てられ、その後、医師を殺して森に逃げ込んでUMAとなった、というものだ。
一方で、オハイオ州に伝わるのは、孤児院の子供たちがクリーブランドに住む狂気の医師にさらわれ、人体実験に使われていたが、施設に火をつけて脱走。その後、奇怪な姿に変貌を遂げた、という説だ。
さらにコネチカット州では、精神病院が火事で焼失し、森に逃走した子供たちが厳しい冬を乗り切るために共食いを始め、しだいに化け物と化していった…と。
どれをとっても壮絶な伝説なのだが、3州いずれにも共通するのが、「施設で暮らす子供」「森へ逃走」「UMA化」という点から、おそらくはもとになる話はひとつと考えられる。そして現在もなお、この3州では目撃談が多発中であり、
「ミシガン州に住む女性が友人らとレイクタウン近郊にある廃墟を探検中に突然、目の前に頭が異常に大きい、子供のような生物が出現しました。懐中電灯を照らすと、その生物は一目散に逃げていったそうです。あるいは、狂気の医師が拉致した子供たちに人体実験を施したオハイオ州カートランド近郊の森では、夜な夜なこの生物が出現するという噂が絶えません。目撃談によれば、メロンヘッドは人間のような姿をしているものの、小柄でやせ細った体に対し、巨大な頭を持っている。口元に見える歯は、サメのように鋭いそうです。そんな姿で夜な夜な森を徘徊しているとなれば…」(UMA研究家)
最も目撃談が多いとされるコネチカット州トランブルとモンローを走るベルベット・ストリート、通称「メロンヘッド・ロード」では、目の前に現れたメロンヘッドがドライバーやハイカーを驚かせる事件が続出。それでも肝試しに訪れる見物客があとを絶たないという。
自然災害への警鐘を鳴らすために出現するならともかく、ただいたずらに人間を恐怖に陥らせるメロンヘッドに、周辺住民らは頭を痛めているのだった。
(ジョン・ドゥ)