あと一歩のところでプレーオフ昇格を逃したのは、サッカーJ3で8位のアスルクラロ沼津だ。11月17日に行われた福島ユナイテッドFCとの一戦で、1-2の逆転負けを喫し、残り1試合での「終戦」が決まった。
2023年シーズンに中山雅史監督が就任すると、1年目は最終的に13位とイマイチの結果に終わったが、2年目の今季は躍進を遂げた。
開幕からホームゲームで6連勝を飾り、序盤戦で勝ち星を重ねると、第24節を終えた時点で13勝4分7敗。2位のJ2自動昇格圏の好位置につけていた。
Jリーグを取材するサッカーライターが解説する。
「現役時代は闘志あふれるプレーで本能のままにゴールを量産していましたが、監督になると理論派に変貌を遂げました。『続・超攻守一体』をテーマに掲げ、攻守の切り替えの速さ、的確なポジション取り、丁寧にパスをつなぐ精度のこだわりなど、練習の時から徹底して中山サッカーを浸透させていきました」
事実、平均ボール支配率はJ3トップを記録し、ポゼッションサッカーで対戦相手を翻弄するようになった。
さらに、ベテラン選手の獲得へと動き、2014年ブラジルW杯日本代表メンバーのFW齋藤学や、2013年にJリーグベストイレブンを受賞したFW川又堅碁を獲得した。
「監督と選手の関係になれば、一定の距離を保つことが必要になります。そのため、ベテランの齋藤と川又には試合の後半に流れを変える役割を任せるとともに、これまで培った経験を若手に伝えたり、ムードメーカーとしてチームを引っ張ってもらいました」(前出・サッカーライター)
だが、8月を終えて3位をキープしながら13位まで失速した昨シーズンと同様、今シーズンも秋に「落とし穴」が待っていた。
第25節、昇格を争っていたFC今治との直接対決で1-2と接戦を落とすと急に攻守の歯車がかみ合わなくなり、第32節までに1勝1分6敗と大失速したのである。J3関係者が言う。
「モチベーターでもある中山監督のゲキは、選手に届かず。終盤の失速原因はやはり全体的な補強の弱さと、勝負がかってきた時の、相手への対応がまだまだということ。中山監督は現役時代のイメージを一変させた理論派サッカーを展開したいわけですが、相手に研究されてもさらに上回れるか。理論をもう一段階、上げる必要があるでしょう」
それでもこの2年間で、しっかりとチームの土台作りに成功したことは間違いない。来シーズンこそ初のJ2昇格へと導けるのか。不屈の男のリベンジを注視したい。
(風吹啓太)