「国民に向かって説明する場が、裁判だけでいいはずがない。国会審議を通じて明らかにすべきことは、明らかにしていかなければならない」
これはカジノを含むIR(統合型リゾート)事業をめぐる汚職事件について、石破茂首相が無役時代の2020年1月、初詣で地元・鳥取市内の神社を訪れた際に、記者団に語ったものだ。石破首相はこの発言を忘れているかもしれないが、問題が再び浮上している。
米司法省が日本でのIR事業に絡んで日本の国会議員らに賄賂を渡したとして、中国のオンライン賭博業者の元最高経営責任者(CEO)を、海外腐敗行為防止法違反などの罪で起訴したからだ。起訴されたのは中国・深センに本社のある「500ドットコム(現・ビットマイニング)」のCEOだった潘正明被告。
潘被告は2017年から2019年にかけて、190万ドル(約2.9億円)をコンサルタントを通じて日本の政治家らに提供。5人の政治家の中には、石破首相の側近である岩屋毅外相が含まれているとされる。
岩屋氏の名前は2020年にも浮上した。この時、岩屋氏は記者会見を開いて、
「中国企業から現金を受け取ったことはない。天地神明に誓って、不正には関わっていない」
そう断言して、中国企業側からの現金受領を全否定していた。
いったんは鎮静化したが、
「米司法省はこの問題に、並々ならぬ強い意欲を持っている」(日本政府関係者)
岩屋外相はまた否定するだろうが、石破氏は得意の「ねばねば構文」で2020年も国会審議の必要性を強調しており、それがブーメランとして跳ね返ってきた格好だ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)