自民党の旧安倍派を中心とした「裏金問題」に関与した候補者に対し、石破茂首相(自民党総裁)が非公認、比例代表との重複禁止など、軒並み厳しい処分で衆院選に臨む中、自民党内では石破首相が率いた派閥「水月会」や岩屋毅外相の不記載問題を問う声が出ている。
石破首相、岩屋外相ともに「事務的ミス」として片づけ、野党の追及を突っぱねようとしている。だが、ある自民党の閣僚経験者は、
「安倍派なら裏金、自分たちは事務的ミス。どこに違いがあるのか」
と怒りをあらわにするのだった。
旧石破派が2019年から2021年に開いた政治資金パーティー収入のうち、政治資金収支報告書への記載が義務付けられている計80万円分を記載していなかった疑いが、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」の報道をきっかけに浮上した。政治資金規正法は20万円超のパーティー券を購入した個人や団体について、名前や金額を収支報告書に記すよう義務付けている。
石破首相は10月7日の衆院本会議で記載ミスを認め、
「事務局側の確認漏れがあり、パーティー券の支払総額の記載に誤りがあった」
と答弁した。さらに、こうも弁明。
「誤りは内訳の金額で、収入総額の誤りは確認されていない。修正可能な過去の報告書は、既に訂正手続きをした 」
同じことは岩屋外相にも起きている。岩屋氏の政治資金管理団体「新時代政経研究会」が、所属する派閥「志公会」(麻生派)からの寄付金約500万円を、政治資金収支報告書に記載していなかったのだ。2021年、2022年の2年分で、既に修正を届け出たという。
岩屋氏の事務所は読売新聞の取材に対し、石破首相と同じようなことを答えている。
「(パーティー券収入の)キックバックではない。事務的なミス」
「事務的なミス」といっても単年度ならわかるが、旧石破派は6年間、岩屋氏は3年間続いている。日に日に石破首相の発言に説得力がなくなっている象徴のような問題だ。ここで首相が党内野党なら「李下に冠を正さずで非公認を申請すべきだ」と言うところだが…。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)