当然、石破氏とその周辺はおもしろくない。前出のさわらび会メンバーによれば、この時、グループ内では石破氏を囲む形で、次のような一幕もあったという。
「業を煮やしたさわらび会の面々が『かくなるうえは、大将みずから官邸に乗り込み、総理との直談判に及ぶべきだ』と詰め寄ったんです。ところが、石破さんは『そういうやり方は私の流儀じゃない』と一蹴。いかにも石破さんらしい態度でしたが、本音は『どうして私が官邸に出向かなければいけないのか。総理が党本部に足を運ぶのが筋でしょうが。冗談じゃない』という感じでしたよ」
石破氏には、先の総裁選の際に党員票で圧倒的な支持を集めながら、それを安倍陣営に派閥票でひっくり返された、という痛恨の過去がある。しかもそのあとに行われた総選挙では忸怩(じくじ)たる思いを胸に収めつつ、選挙の顔として獅子奮迅の活躍を示し、自民党を大勝利に導いた。さわらび会の別の関係者も、次のように畳みかけてはばからない。
「実は、麻生氏を重用してやまない安倍総理の周辺から今、『次の総理・総裁は麻生氏に』との声が早くも上がっているんです。これを耳にしたさわらび会の面々からは『これでは石破さんも夏の参院選でコキ使われてお払い箱だ。石にかじりついてでも麻生後継だけは阻止しなければならない』との勇ましい声が公然と上がり始めています」
さらにこの関係者によれば、
「石破陣営の中には、安倍総理を名指しする形で、『あんなお友達野郎、二度と信用できるか!』などと、口汚く罵る者までいます」
さわらび会が安倍総理への不満で揺れていた1月16日、石破氏は経団連幹部との会合に出席し、アベノミクスで進行する円安について「産業によっては困る企業も出てくる」と苦言を呈してみせた。このひと言で株価は急落、為替も円高に振れたが、「物議を醸した発言の半分は石破氏の持論だが、残りの半分は安倍総理への意趣返しだった」(石破氏周辺)という。
そんな中、通常国会開幕直後の1月31日、石破氏は「無派閥連絡会」なる政策集団を立ち上げ、初会合を開いた。連絡会の母体はさわらび会。会合には、小坂憲次元文科相(66)など衆参両院議員ら37名のほか、代理人8名を含む合計45人が出席した。
「無派閥連絡会とは名ばかりで、これは事実上の石破派の旗揚げと見ていい。初会合に出席した45名という規模は、約80名の町村派、約50名の額賀派に次ぐ一大勢力。しかも、選挙に強い石破氏の人気を考えれば、今後の規模拡大も必至の情勢と見ていいでしょう」(自民党関係者)
反撃のノロシが上げられたのである。