大相撲九州場所は11月24日の千秋楽、14日目まで13勝1敗で並んでいた琴桜と豊昇龍の大関決戦となった。結びの一番で対戦すると、琴桜が叩き込みで下し、初優勝を果たした。大関在位5場所目での悲願成就だった。豊昇龍は関脇だった昨年名古屋場所以来の、優勝のチャンスを逃した。
綱取りがかかる来場所について、解説者の琴風氏はこう言った。
「今場所のような相撲を取れば、夢が叶わないこともない。ただ、豊昇龍も負けましたけど、やっぱり綱取りじゃないんですか」
なんとダブル横綱昇進の可能性を示唆したのだ。
横綱昇進の条件は、大関で2場所連続優勝、あるいは優勝に準ずる成績であると、横綱審議委員会の内規にある。13勝2敗で千秋楽まで優勝を争った豊昇龍は、確かに条件に当てはまる。ただ、秋場所は8勝7敗に終わっていた。来場所はよほどの成績でなければ、昇進を見送られる可能性はあろう。
来場所は横綱・照ノ富士が復帰する予定であり、休場明けの照ノ富士の優勝確率が非常に高いことを考えると、2人の横綱昇進は決して楽な道ではないことが窺えるのだ。
仮に2大関が横綱同時昇進となれば、奇しくも今場所中に亡くなった北の富士さんが玉の海と同時に昇進した昭和45年の春場所以来、55年ぶりの記録となる。大相撲史家も目を細めて言う。
「横綱ダブル昇進は昭和36年の九州場所、柏戸と大鵬の例も含めて昭和以降、2回だけしかない。北の富士さんが天国から2人の横綱昇進を後押しするかもしれないですね」
来年の初場所にはもうワクワク感しかない。
(石見剣)