田中将大は単なる客寄せパンダに甘んじるのか。ヤクルトの田中獲得レース参戦には、球団の戦力分析とは別の「大株主の強い意向」が働いているというのだ。スポーツ紙プロ野球担当デスクが、その裏事情を解説する。
「それは主要株主であるフジテレビを核とする、フジメディアホールディングスがとにかく田中を欲しがっているからです。先発陣が弱いヤクルトでも、今の田中が割って入るのはなかなか難しい。しかし球界内での評判が地に落ちているフジテレビにとっては、またとないコンテンツ。復活して200勝すれば、十分に番組を作れる。春キャンプから密着すれば、いいドキュメント番組になりますからね。仮に200勝できなくても、その奮闘ぶりが目を引くことは間違いなしです」
確かに球界内でフジグループは来年以降、より厳しい立場に追い込まれる。球界最大のコンテンツである大谷翔平からは、新居報道トラブルでほぼ出禁状態。その上、NPB(日本野球機構)からは日本シリーズの裏番組としてワールドシリーズ関連の番組を放送したことで、取材パスを取り上げられた一件がある。さる放送関係者が言う。
「今後、野球関連の番組作りにおいて、フジテレビは苦労すると思います。もはや頼みの綱は、ヤクルトしかないのでは」
スポーツ紙の遊軍記者もこれに頷く。
「戦力的には、これも獲得を目指している、ソフトバンクからFAになった石川柊太の方が間違いなく上です。ただ、石川で客は呼べない。近い将来、主砲の村上宗隆がメジャーリーグに行けば、全国区の選手はひと握り。田中の名前は営業的には必要でしょうね」
非戦力的な扱いだが、それをプライドの高い田中が甘んじて受け入れるかは不透明。全ては田中がかつての輝きを取り戻すしかないのだが、退団会見で田中が語った「やりがいをどれだけ感じるか」はヤクルトにおいて、どうなのだろうか。
(阿部勝彦)