今季のサッカーJ3は大宮アルディージャが圧倒的な強さを見せ、早々とJ2復帰を決めた。J2も清水エスパルス、横浜FCがJ1復帰を決めた。そしてJ1の優勝争いは、最終戦までもつれ込む大混戦となっている。
第37節終了後の順位は以下の通りだ。
1位 ヴィッセル神戸 勝ち点69 得失点差+22
2位 サンフレッチェ広島 勝ち点68 得失点差+31
3位 町田ゼルビア 勝ち点66 得失点差+22
この3チームに優勝の可能性が残っている。大混戦を招いた原因は、3強といえる上位3チームに、ダンゴ状態から抜け出す力がなかったからだ。
今季、開幕から快進撃を見せてきた町田は夏場に失速し、8月31日の第29節、浦和レッズ戦に引き分けて首位陥落。さらに31節から35節までの5試合を、2分3敗と後退した。
代わりに首位に立った広島は、23節から33節までの11試合を10勝1分と快進撃を続け、その勢いのまま優勝すると思われたが、34節からまさかの3連敗で、神戸に首位を明け渡した。
その神戸も8月7日の第25節、川崎フロンターレに敗れて以降、Jリーグのほか天皇杯、ACLE(アジアチャンピオンズリーグエリート)を含む公式戦21試合で、負けたのは第34節のFC東京戦だけという安定した戦いを見せていた。
ところがここ2試合は、東京ヴェルディにアディショナルタイムに追いつかれ、柏レイソル戦では逆にアディショナルタイムで追いつき、なんとか引き分けた。この2試合を勝っていれば、柏戦で優勝が決まっていたのだ。
3チームとも抜け出すチャンスがありながら、それをものにできなかった。これが大混戦を招いたのである。
では、この3チームの最終戦の相手はどこか。神戸はホームで湘南ベルマーレを迎える。広島はアウェーでG大阪戦。町田もアウェーで鹿島アントラーズと対戦する。湘南はすでに残留を決めており、思い切って向かってくるはずだ。G大阪と鹿島は、最終戦のホームで胴上げは見たくないだろし、名門の意地を見せたいところであり、簡単に勝たせてはくれないだろう。
優位なのはやはり、最終戦をホームで戦える首位の神戸だ。昨季の優勝経験は大きい。ただ、気になるのは得失点差。神戸が敗れて広島が引き分けると勝ち点で並ぶが、得失点差で広島が優勝する。もし神戸と広島が敗れて町田が勝つと、町田が得失点差で神戸を上回り、優勝する。神戸としては、ホームで勝って優勝を決めたいところだ。
3位の町田は勝たなければ優勝の可能性がなくなるが、神戸も広島も、勝ちにこだわらないといけない。なぜなら、今のJ1リーグはVARが導入されているため、アディショナルタイムが長くなっている。柏×神戸戦の武藤嘉紀の同点ゴールが認められたのは、延長に入ってからの104分だった。最後の最後まで何が起こるかわからない。それが現代サッカーなのだ。
最終戦でどんなドラマが生まれるのか。3試合とも目が離せない。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。