契約更改の場でプロ野球選手が要求するのは、なにも金額だけではない。球団に対する不満をブチまけたり、設備の充実を訴えるケースもある。広島の坂倉将吾が球団に申し入れたのは、マツダスタジアムの問題だった。
2500万円増の推定年俸1億5000万円でサインした坂倉は今季、打率2割7分9厘で、チームトップの12本塁打、44打点を記録。11月の「プレミア12」では侍ジャパンの正捕手として出場し、打率4割4分4厘でベストナインに選ばれている。
契約更改後、笑顔で会見した坂倉だったが、球団への不満はしっかりと口にしていた。かねてから問題視されていたマツダスタジアムの「暑さ問題」について、
「僕なりに意見は伝えました。暑さ対策は球団とチームが一丸になって取り組まないといけない」
坂倉が球団に強く訴えるのも当然だ。広島は今季7月6日と7日の中日戦と、13日、14日のヤクルト戦の土・日曜日の試合を、デーゲーム開催。いずれも猛暑日で、慣れた本拠地とはいえ、選手は明らかに普段以上の身体的負担を強いられた。
一方で、観戦するファンも命がけだ。マツダスタジアムではこの時期、熱中症で倒れて緊急搬送されるファンが相次ぎ、これまでにも幾度となく球団にナイター開催を求める声が上がっていたが、聞き入られることはなかった。
今回、契約更改の席で坂倉がファンの声を代弁した形だが、選手間でもかなり問題視されていたということだろう。
広島は優勝を目前にした9月、セ・リーグタイ記録の月間20敗を喫し、まさかの4位に転落した。
「暑いのが始まるのは早くなっている。原因が9月だけじゃないと思う」
という坂倉の訴えは、深刻な魂の叫びなのである。
坂倉は来季、プロ通算9年目を迎える。国内FA権獲得までにはあと1年115日あるが、取得して権利を行使した場合、争奪戦が繰り広げられることだろう。球団がいつまでも「暑さ対策」をないがしろにしていると、ドーム球場を本拠地にするチームへ移籍してしまうかもしれない。
(ケン高田)