「当然、高校の時もプロに入ってからも、ピッチャーとしてはマー君の方が上だと、ずっと思っていた。でも30歳になったら、あるいは40歳になったら、どうなるかはわかりませんし、大学4年間の経験を生かせると、僕は思っていました」
これはかつて、「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹氏が、スポーツメディアのインタビューで放った言葉である。いま改めて聞いてみると、甲子園のライバルだった田中将大(楽天から自由契約)との「差」を噛みしめざるをえない。
2006年夏の甲子園決勝、早実VS駒大苫小牧で2人は頂点を争い、伝説となった投げ合いを演じた。延長再試合の結果、勝利したのは斎藤。
高校卒業後は大学、プロと進む道は分かれたが、斎藤は2010年のドラフト1位で日本ハム入り。斎藤と田中はプロとして3度、先発登板対決しているが、全て田中が勝利している。
その後、田中は2013年に24勝0敗1セーブの成績で最多勝、最優秀防御率、勝率第1位の栄誉を得る。圧倒的な実績を手土産に翌年、ヤンキースに移籍した。
片や斎藤はといえば、プロ入り通算10年で15勝26敗、防御率4.34の成績を残し、2021年にユニフォームを脱いだ。プロとしての実力は誰の目からも圧倒的に田中が上だが、ともに36歳になった現在、冒頭の斎藤の言葉が蘇るように、2人の立場は大きく逆転している。
斎藤氏は「株式会社斎藤佑樹」の代表取締役でありながら、3月から「news every.」(日本テレビ系)の月・火曜キャスターを担当。10月25日には株式会社ライブドアの取締役兼CIO就任を発表するなど、八面六臂の活躍を見せている。楽天から実質的な戦力外宣告を受けた田中とは、現在地に大きな差が生じている状況だ。
斎藤氏は11月25日の「news every.」で、田中に次のような言葉を贈っている。
「マー君がどこの球団に行っても僕は応援していますし、僕たちの世代の代表として、200勝を達成する姿を心から願っています」
その表情にかつてない「余裕」を感じたファンは、多かったのではないだろうか。
(ケン高田)