「周囲の四季を感じながら、天候を気にせず野球を楽しめる」という当初の目論見は、今ではすっかり色あせてしまった。西武ライオンズの本拠地ベルーナドームの「猛暑問題」にいよいよ我慢がならず、選手が怒りの声を上げたのだ。
今季、ソフトバンクから西武に移籍した野村大樹は球団事務所で契約更改交渉に臨み、450万円アップの1520万円でサインしたが、問題は金額ではなかった。
野村はプロ6年目で自己最多の59試合に出場し、打率2割2分2厘、5本塁打、22打点、OPS.708の成績だった。ソフトバンク在籍の5年間はほとんど出番に恵まれず、目立った成績を残すことができなかったが、チームが変わったことで一気に才能が開花した。
野村にとって、移籍はまさに吉となったわけだが、一方で身体的な負担は一気に増した。特に夏場の暑さはかなりこたえたようで、
「来た初日のロッテ戦で目が痙攣してしまって、球があまり見えなかった。暑さの次元が違う」
そう言って、ベルーナドームへの不満をブチまけ、改善を求めたのだ。
事実、ベルーナドームの暑さは尋常ではないレベルに達している。武蔵野の丘陵地帯を掘り下げて建設したため風通しが悪く、とにかく夏場になると熱気と湿気がこもる。グラウンドはおろか、スタンドも含め、球場全体がサウナのごとき状態と化し、「夏は球場に行かない」と断言するファンは多い。実際に試合をする選手は、たまったものではないのだ。
今季の西武の本拠地観客動員数は72試合で155万5280人で、1試合あたり2万1601人は12球団で最下位。球場によって収容人数が異なるため単純に比較することはできないが、ファンの足が遠のいていることは確かだ。
過去には暑さに強いとされていた「おかわり君」こと中村剛也が、熱中症で倒れたことがある。「なんとかしてくれ」と思っているのは、なにも野村だけではないだろう。
ベルーナドームは1999年に日本で5球場目のドーム球場として再スタートした際、壁がないことを理由に、家屋に該当しない「償却資産」として申告している。しかし結局は家屋と認定され、他のドームと同じく、建物の固定資産税を支払うことになった。
下手な金の計算などせず、最初から完全なドーム球場にしていれば、選手やファンに異常な暑さを強いることはなかっただろう。
野村の訴えはどうなるのか。実際問題、解決方法などあるのだろうか。
(ケン高田)