マズイのは当日の騎乗ぶりだけではない。直前のテレビ番組で距離を心配する発言をしたのだ。兜氏は怒りを込めて言う。
「ジャスタウェイが凱旋門賞(仏GI・14年10月、8着)のゴール後、元気いっぱいに先着馬を追い抜いていったことをどう思っていたのか。あれはまだ馬に余力があった証拠。あの姿を見るかぎり、コーナーを6つ回る中山で距離不安などあるわけがない。これは有馬記念を勝った経験があるアンカツもレース前に言っていました。結局、馬を信頼していないから、あんな競馬になったんです。福永は口では『エピファネイアやジャスタウェイは僕がいちばんよくわかっている』と言いますが、疑わしい。負けたレースから学ぶ姿勢がない騎手。だから年明けに同じ過ちを犯すのです」
今年1月11日のシンザン記念(GIII)。3番人気のナヴィオンに騎乗した福永は好スタートを決めたにもかかわらず、またしても最後方まで馬を下げてしまう。4コーナーではまだラスト。直線で中をついて迫ったが、結局、届かず3着止まりで、狙っていたクラシック出走の権利は取れなかった。有馬記念の悪夢再来に、またしても競馬ファンから怒りの声が続出したのである。
対照的に、前走の失敗(後ろから行って前詰まりにあう)を反省、早めに動いてシンザン記念を制したのがグァンチャーレ騎乗の武豊(45)。最後こそいっぱいになってハナ差まで迫られたが、積極的な騎乗ぶりが功を奏した。武は今年、芝でもダートでも前々での勝負姿勢が目立ち、現在の好成績(2月13日現在、11勝で第7位)につながっている。復活の兆し大で、このままいけば5年ぶりの年間100勝も確実だろう。
対福永という観点で、武と同じく復活が期待できる騎手が内田博幸(44)だ。1月19日の京都牝馬ステークス(GIII)を9番人気のケイアイエレガントで逃げ切り勝ちしたレースでは、久々に豪腕の真骨頂を見せた。勝利をもたらしたのは何といっても、追いだしてからの力強さ。勝負に賭ける執念が伝わってきたのだ。
その翌日の中山がまた凄かった。6、8、9レースのダート戦で9、7、6番人気馬で2、3、2着の大暴れ。ビッグな配当を提供したのだった。レースぶりも先行あり、差しありと自在。ケガを数回経験して以降、内を思い切ってつけなくなっていたが、9レースのキングブレイクではそれもやって2着に食い込んでいる。