2024年のJリーグ優勝争いは、3チームが最終戦までもつれ込む大混戦となった。結局、優勝は首位のヴィッセル神戸がホームで湘南ベルマーレを3-0で破り、史上6チーム目の連覇と天皇杯優勝の国内2冠に輝いた。逆転優勝を目指してアウェーに乗り込んだ2位のサンフレッチェ広島、3位の町田ゼルビアは、それぞれガンバ大阪、鹿島アントラーズと対戦。勝たなければならない中、名門の意地の前に敗れて自滅した。
3チームのうち唯一、ホームで戦えた神戸は、立ち上がりから球際の激しさと運動量という神戸らしいサッカーでペースを握り、スキのない動きで湘南を圧倒した。まさに、優勝にふさわしい戦い方だった。
それでも、今季の神戸は決して盤石ではなかった。昨季のMVPで得点王の大迫勇也は厳しいマークに苦戦して、得点が伸びなかった。キャプテンの山口蛍は夏以降、ヒザの故障で長期離脱している。
大迫の得点の穴を埋めたのは、シーズン通して安定したプレーを見せた武藤嘉紀と、川崎フロンターレから移籍してきた宮代大聖だった。最終的にはこの3人が二桁ゴールを記録し、チームの得点源となった。山口の穴を埋めたのは、セルティック(スコットランド)からレンタル移籍し、アビスパ福岡でプレーして今季、神戸に移籍してきた井手口陽介。試合を重ねるたびに、安定感を増していった。
大迫や武藤がどうしても目立つが、ケガ人が出てもそれを埋めるだけの選手層の厚さがあった。まさに総合力の優勝だった。
ただ、今季のJリーグは、町田の快進撃がなければ話題がないシーズンだった。町田といえば、ロングスローでのタオル問題、PK獲得でボールに水をかける問題もあったが、良くも悪くも話題を提供してくれたのは事実。来季はアジア・チャンピオンズリーグに出場する。アジアでも暴れてほしい。
期待を裏切ったのは浦和レッズだろう。今季からマティアス・ヘグモ氏が監督に就任。ところが、ヘグモ監督獲得に動いた西野努テクニカルダイレクターが突然、退任した。
さらに、ヘグモ監督就任で出番が減ったキャプテンの酒井宏樹が、出場機会を求めて移籍。代わりにキャプテンに就任した伊藤敦樹も、8月に海外移籍してしまった。
トドメは8月末、ヘグモ監督を解任し、昨季まで監督だったマチェイ・スコルジャが再登板した。
ここ5シーズンで4度の監督交代。このドタバタ劇はいつまで続くのか。しかも今夏、攻撃的なポジションの選手を補強したが、2列目やウィングに同じようなタイプの選手が増えただけで、大きな戦力にはなっていない。
大事なことは、クラブとしてどういうサッカーを目指すのか。そこがハッキリしていない。クラブとしての方向性が決まり、そのサッカーに合った監督を決め、補強するのが普通ではないか。今の浦和は監督が代わるたびにサッカーが変わり、次から次に補強しているだけ。まずはチームの土台作りから始めないといけない。
2024年のJリーグは、神戸の連覇で幕を閉じた。来季の焦点は、どこが神戸の3連覇を阻止するのか。それとも、神戸の黄金時代が来るのか。その戦いはもう始まっている。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。