シリアのアサド政権が崩壊した。予想以上に早い展開だったが、アサド政権とは長らく友好関係にあった北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は、政権が危機的な状況にあることをいち早く知っていた。
北朝鮮外務省は12月5日、朝鮮中央通信の質問に答える形で、
「テロリストの無謀な軍事的妄動によって、情勢が刻一刻、悪化している」
と正確な情勢分析をし、シリア政府への全面的な支持を表明していた。そして北朝鮮報道官は次のように非難する声明を出している。
「シリアの山間の奥地に群がり、辛うじて余命を維持していた様々なテロリストがこの頃、外部勢力の政治的操りと軍事的支援の下、シリア政府と軍隊が統制している諸地域を不意に攻撃して平和的な都市と村を破壊し、罪のない民間人を殺戮したのは、何によっても正当化されない極悪な反人倫犯罪である」
その上で報道官は、次のように言及。
「危機解決のための、シリア政府と人民の正義の闘いと、中東地域で強固な平和と安定を実現しようとするアラブ諸国の努力に、全面的な支持と連帯を表する」
報道官は「外部勢力」について具体的な発言はしていないが、欧米のメディアがそこまで危機的な状況にあるとは報じていなかった中で、思い切ったことを言っている。
北朝鮮はシリアの核開発を秘密裡に支援していたが、2007年9月6日深夜、イスラエル空軍が超低空でシリア領土に侵入し、東部にある原子炉とみられる施設を空爆し、破壊した。北朝鮮とシリアは弾道ミサイル開発、化学兵器開発などでも長らく協力関係にあった。こうした緊密な関係の中で、北朝鮮はシリア情勢をある程度、正確に把握していたとみられる。
金正恩総書記は9月、朝鮮創建76周年に際して祝電を寄せたアサド氏に答電を送るなど、外国首脳の中では数少ない「友人」だった。明日は我が身ともいえる政権の崩壊劇を、どのように見ているのだろうか。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)