芸能

【追悼】骨転移と髄膜転移の激痛をひた隠して最期の収録に挑んだ小倉智昭のキャスター魂

 22年間、フジテレビ「とくダネ!」で朝の顔を担った小倉智昭さん(享年77)が12月9日午後3時8分、膀胱がんのため77歳で亡くなった。公式サイトに綴られた闘病記録は壮絶だ。

〈2016年に膀胱がんを患って以来、長期にわたり闘病生活を送ってきました。2018年に膀胱を全摘出したものの、2021年に肺に転移。根治を目指し様々な治療を行ってきましたが、2023年に腎盂(じんう)がんが見つかり同年12月に左腎臓を全摘出しました〉

 膀胱を全摘出後は自身の腸を使って膀胱を再建したことや、その後、肺への転移が見つかったことを、自身の番組で明かしていた。胃がんや大腸がんに比べて、膀胱がんについての情報量は圧倒的に少なく、同じ病に苦しむ闘病仲間の参考になるようにと、闘病経験を赤裸々に告白したものだ。

 発見が遅れた自身の猛省から、血尿が混じったらすぐに専門病院に行くよう、視聴者に勧めてもいた。実母の介護をする愛妻に、自身の看病で余計な負担をかけまいと、闘病していても自分のことは自分でやるという「老年別居生活」を決断。そんな小倉さんに、がん細胞は容赦なく襲いかかる。闘病記録は続く。

〈先月に入り強い腰痛を訴え検査したところ、骨盤、腰椎および髄膜に転移がみられました。今月に入り体調が急変し、昨日家族に見守られながら自宅にて息を引き取りました〉

「とくダネ!」で共演して小倉さんの一番弟子を名乗り、自身もがん闘病経験のあるフリーアナ・笠井信輔らが12月10日の「めざまし8」に出演すると、最期は愛妻の手を握りながら永遠の眠りについたと明かしている。

 骨盤や腰椎、髄膜へのガン転移とサラッと書いているが、骨や腰椎への転移は寝返りをうつたび、一歩歩くたびに、まるで骨が折れたかのような激痛が走る。笠井によると、小倉さんは11月上旬に「小倉ベース」(フジテレビ系)の番組収録をした際は、そんな激痛に苦しんでいる素振りは見せなかったという。

「強烈な(神経)ブロック注射を打って撮影に臨んでいたって話は聞きました。それもがんの骨転移の状況だってことが、あとでわかったんですけども。『小倉ベース』に関しては、これはやるんだって気持ちで臨んでいましたね」

 11月23日に放送された「小倉ベース」では、都内の自宅でEXILEのHIROらと軽快なトークを披露していた。その後、千葉県柏市の病院に入院。12月4日に病院で「治療の手立てはない」との宣告を受け、12月6日に自宅に帰ってきたばかりだった。

「治療の手立てがない」という主治医の言葉は非情に聞こえるが、小倉さんの入院先はガンの緩和ケア、終末期ケアを提供する専門病院。医療麻薬のモルヒネなどで激痛を緩和するなど、八方手を尽くした上で、人生最期の日々を、番組収録したばかりの自宅で好きなものに囲まれて過ごしたい、という本人の決断だったのだろう。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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