日本国内で改正大麻取締法が12月12日に施行され、大麻の使用が罰則の対象となった。この法改正で大麻の乱用防止を目指す一方で、世界の一部で進む合法化の流れと逆行するものとして、賛否を呼んでいる。そこで現在、大麻が解禁されているタイに滞在中の筆者が、現地の日本人に話を聞いた。
タイでは2018年に医療および研究目的での大麻使用が解禁され、2022年には大麻草の栽培や一般使用が合法化された。現行のタイ法では、大麻草の栽培は事後の届け出さえ行えば、許可されている。また、大麻の全ての部位の所持や、一部の部位に限られた販売も可能だ。タイ国内では大麻を扱う店舗やレストランが一時急増し、大麻関連ビジネスが広がった。タイの町中にあるディスペンサリーでは、大麻の栽培環境をを展示しているケースもある(写真)。
しかし、規制が完全に緩いわけではなく、大麻苗の販売、種子の輸入、THC(テトラヒドロカンナビノール)含有量が0.2%以上の大麻抽出物の製造や販売、大麻製品の輸出にはライセンスが必要とされる。こうした規制について、大麻ショップを運営する日本人は次のように語る。
「日本でも医療目的などで大麻を合法化するなら、販売を許可制にすればいいと思います。ライセンスを取得した人だけが販売できる仕組みを整備すれば、乱用のリスクを抑えられるはずです。また、使用者から使用税を徴収する仕組みも考えられます。タイでは大麻を購入する際にパスポートの提示が求められ、使用者の把握が徹底されている。このような仕組みを導入すれば、日本でも適切な管理が可能ではないでしょうか」
さらにこの日本人は、日本が今後、大麻政策を柔軟化することによる経済的なメリットにも言及した。
「インバウンドの推進を考えるなら、大麻が非合法な国々から訪日する観光客の増加が見込まれます。観光客の増加は日本経済にいい影響を与える可能性がありますね。日本が大麻栽培の技術を向上させ、そのノウハウを海外に輸出することも、ひとつの選択肢でしょう。さらには肥料や栽培器具など、関連する周辺産業の発展も期待できます」
日本国内では改正法によって大麻の使用が正式に禁止され、厳罰化されたことで、乱用防止への期待が高まっている。その反面、大麻合法化が進む海外に使用者が流れる「大麻ツーリズム」の増加や、国際的な政策の違いによる影響が懸念される。
タイをはじめとする諸外国では、合法化と規制のバランスを模索する中で、経済や観光の新たな可能性が生まれている。日本はその流れをどのように受け止め、国内外での対応を進めるかが問われている。
(カワノアユミ)