4月13日に開幕するはずの大阪万博だが、このどん詰まりでパビリオンの工事が進んでいない。建築エコノミストの森山高至氏がSNS投稿で〈万博パビリオン工事の状況。1階部分はまったく未完成。 これで2週間後にオープンは不可能だろう〉と3月30日に指摘していたが、その通りになりそうなのだ。
そういえば共同通信も3月12日に「万博・海外館、建設完了は2割弱 開幕まで間に合うか懸念」という記事を配信していた。
だが過去の万博でも、遅延はつきものだった。
例えば1967年の、カナダ・モントリオール万博。開催1年前の時点で工事は大幅に遅れ、会場につながる橋の建設がままならない。開催自体が危ぶまれたのだった。冬の突貫工事でギリギリ間に合ったものの、厳冬の水中で作業にあたったスタッフが、不慮の事故に遭ってしまう。追い詰められるスケジュールによって、事務総長と建設部長が過労で倒れた、とも…。
1992年5月、スペイン南部のセビリアで開幕したセビリア万博。これも95にのぼるパピリオンの建設工事が大幅に遅れ、半数以上が未完成のまま開幕を迎えると言われていた。事実、間に合わなかったパビリオンもあった。
開幕2週間前に報道陣に公開された際、会場にはクレーンが林立し、テーマ館は屋根を建設中、国際赤十字館は鉄骨のみの状態だった。開幕には絶対に間に合わない、と誰もが口にした。
ところが開幕当日、外見はすっかり完成。「スペインの奇跡」と、報道陣は目を見張った。いや、中に入れば展示が間に合わない部屋は閉め切ったままで、場内の自動販売機のほとんどに「使用不能」の貼り紙があったのだ。
不幸なことに、開幕前日に南太平洋諸国館が、火事でほぼ全焼。焼け跡の前で民族音楽のパフォーマンスを展開し、なんかと盛り上げたというが…。
2010年5月に無事開幕した上海万博も、1月の時点でおよそ9割が完工していたにもかかわらず、他の付属施設や道路などの整備は遅れ気味。その状況は3月末になっても変わらず、開幕に間に合わないパビリオンが出る可能性がある、と指摘された。
大阪万博の建設の遅れは、日本の建設業の施工能力に余力がなくなってきていることも原因だという。国の威信を懸けた一大イベントのカウントダウンはもう始まっている。
(魚住新司)