12月12日に施行された改正大麻取締法により新たに「使用罪」が設けられ、日本国内での大麻の使用が罰則の対象となった。この改正法では大麻およびその主成分である幻覚作用を持つ「テトラヒドロカンナビノール(THC)」を「麻薬」と位置づけ、不正所持に加えて使用でも7年以下の懲役刑が科される。これにより、若者を中心とした大麻乱用の取り締まりが強化される一方で、医療分野では安全性と有効性が確認された大麻由来成分を含む医薬品の活用が可能になる。
新たに「使用罪」が設けられたことについて、世間では「世界では大麻が解禁されつつあるのに日本は逆行している」「なぜ今になって使用罪を新設したのか」という疑問の声があるのも事実だ。
筆者は現在、タイに滞在中なのだが、大麻が解禁されている現地で日本人の意見を聞いてみた。まず、日本の使用罪について「賛成」という声である。
「大麻は脳に直接的なダメージはないと言われますが、ゲートウェイドラッグとしての側面が問題です。大麻を入り口に、コカインや覚醒剤に手を出す人が多いのは事実。実際にタイで大麻に依存して、日本に戻ってもやめられず、薬物中毒から精神を病んで命を絶った人を知っています。タイでは最近、大麻と酒を呷った警察官が銃を乱射する事件が起きました。このような事件はタイでは珍しくなく、政権は娯楽目的での大麻使用を禁止する新たな法案導入を進めています」
タイでは2018年に医療および研究目的での大麻使用が認められ、2022年には栽培や一般使用が合法化された。これにより、大麻を扱う店舗やレストランが急増したが(写真は、バンコクにある大麻ショップ)、事件の影響もあり、現在では取り扱う店舗が減少している。
一方で「使用罪を日本で施行しても、大麻を求めて海外に行くのではないか」という意見もある。別のタイ在住日本人が言うには、
「日本で尿検査によって大麻の陽性反応が出ても、海外渡航歴があって国内で使用した証拠がなければ、立件されない現状がある。そのため、大麻を常用する人がアリバイ作りのために、タイなど海外に行くケースが増える可能性があると思います」
大麻の使用罪によって国内での乱用防止が期待される一方で、海外渡航の増加や現地での事件といった新たな課題が浮かび上がっている。
(カワノアユミ)