「私は強烈な違和感は持っております」
今夏に行われる参院選で、自民党に比例代表で公認された「舌禍の女」杉田水脈氏。これまで何度も問題を起こし、物議を醸した彼女の公認是非をめぐり、野党議員から質された石破茂総理は、3月21日の参院予算委員会で語気を強めたのが、冒頭の言葉だった。「強烈な違和感」は、杉田氏のこれまでの言動に対するものだ。
むろんその背景には、安倍政権を支えた「岩盤保守」の存在が見え隠れするが、石破総理でなくとも杉田氏の言動に「強烈な違和感」を持つ国民は少なくなかろう。
振り返れば、国連の会議に参加した際にはSNS上にこんな投稿をした。
〈チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場〉
〈同じ空気を吸っているだけでも、気分が悪くなる〉
札幌と大阪の法務局から、アイヌや在日コリアンへの人権侵害にあたると認定されたのだ。さらに2020年12月に総務政務官を辞任する際にも、アイヌ関係団体に直接謝罪するのが嫌で辞めたと明言。
そんな彼女が2023年11月、保守系月刊誌のYouTube番組に出演すると、アイヌ文化振興事業に公金不正流用疑惑があるとの見方を示して言い放ったのが、「流行語大賞にノミネートされてもよかったと思うんだけどね、公金チューチュー」という発言だった。
「公金チューチュー」とはNPO法人や一般社団法人、団体・個人などが補助金や助成金などの公金を、それらしい名目や仕組みで国や地方公共団体から巧妙に得ている状態を表した言葉だ。それを根拠も示さず言い切ったことに、批判が集中したのである。
そんな騒動から2カ月後の2024年1月、水田氏が所属する「安倍派」(清和政策研究会)が5年間に現職・元職の衆参議員関連95の政治団体に対し、総額約6億7600万円を渡しながら、それらを記載していなかったと公表。杉田氏の資金管理団体「杉田水脈なでしこの会」も、安倍派からキックバックされた「裏金」計1564万円を、収支報告書への不記載が判明する。
それまで各方面にさんざん暴言を繰り返してきた水田氏は、この時ばかりは自身のブログで謝罪。
〈政治活動に支出しており、不正や私的流用は全くありません。しかし、派閥の指導に従ったとはいえ、記載していなかったことについて、また、そのことを認識していなかったことについて、誠に申し訳なく思っています〉
しかし当然のことながら、これまでの言動との不一致が大きな反感を買うことに。SNS上での批判はとどまることを知らず、
〈パーティー収入は公金だろ?公金チューチューはあんただよ!〉
〈アイヌ文化事業は正式な手続きに則って申請する補助金。悪質なのはどっちなんだ〉
などと集中砲火を浴びることになったのである。
冒頭で触れた参院予算委員会で、「(杉田)発言には強烈な違和感がある」として「自由民主党はいかなる不当な差別も許しません」と強調した石破総理。それでも夏の参院選比例代表公認から外せない現政権に、絶望的な不甲斐なさを感じてしまうのだ。
(山川敦司)