NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の視聴率は2桁に乗るか乗らないかで苦戦しているが、東京都台東区はホクホク顔だ。かねてから浅草寺周辺はインバウンド景気に沸いているが、大河ドラマに便乗して関連観光施設を作り、吉原のど真ん中に「江戸新吉原耕書堂」なる施設までできた。これが吉原に波紋を広げているのだ。
「大河目当ての高齢者観光客で、送迎車が通れない時がある」
こう嘆くのは、吉原特殊浴場の従業員だ。現役の嬢も言う。
「歩道に観光客があふれて、通勤する時は歩くだけでも大変」
吉原が観光客であふれることなどなかっただけに、戸惑いの声が多く出ているのだ。
「江戸新吉原耕書堂」は大河ドラマの主人公たる蔦屋重三郎が江戸時代に新吉原の大門前に開業した、「耕書堂」を模した施設。特殊浴場街の町内会館を改造したものだ。吉原に特化した観光案内や土産品の販売などを行うほか、夜間はシャッターに描かれた浮世絵をライトアップさせている。一部ツアーには、この見学が組み込まれているという。
危惧されるのは、働く嬢のプライバシーが守られるかどうか。京都の舞妓のように、観光客が写真を撮るような行為によって顔バレし、ネットに画像が上がる事態になれば、
「完全な営業妨害ですよ」(店長)
というわけだ。
サービス嬢の出勤スタイルは、銀座・六本木のホステスと比べてかなり地味なため、「被害」はまだ出ていないというが、前出の店長は、
「大河の本をわざわざ買いましたよ。そろそろ舞台が日本橋の方に移る。吉原が早く落ち着くことを願うばかりです」
まさに観光で潤う地域の光と影を見たのだった。
(健田ミナミ)