ガンバ大阪に初のタイトルをもたらし、サッカー日本代表としても活躍した遠藤保仁(現・ガンバ大阪コーチ)。誰も疑うことのない名選手だが、足は遅く運動量が多いとはいえず、フィジカルも強くないため、そのすごさがわかりにくい。ではどうがすごいのか、代表で共にプレーした中村憲剛氏が明らかにした。
播戸竜二氏のYouTubeチャンネルに出演した中村氏は、自身の引退試合に出場してくれる仲間への思いを語っていく。遠藤の番になると、それまで以上に感情を込めて、
「パス交換するだけでいいです。それだけでなんか、わかる感じがするんで」
これには播戸氏から、
「2人にしかわからないことがあるのでは」
と聞かれると、
「それはあります。ヤットさんは(パスに)メッセージがついてる。『それ返して』っていうパスが来るんですよ。返すといい展開になっている。よく代表でありました。僕がトップ下で、ヤットさんがボランチの時に」
さらに遠藤のパス交換を、
「3メートルぐらいの出し入れですけど、それでチームが流れていく」
と絶賛だ。ガンバ大阪で一緒にプレーした播戸氏も、
「別に出さんでもええんやけど、出した方が何か動くんやな。俺らも時間作れる」
ただのパス交換が大きな意味を持つのだと、不思議がったのだ。
なぜ単なるパス交換が意味を持つのか。中村氏はこう分析した。
「(ボールの)往復の間に、FW陣が動く時間とスペースがある。自分がずっと持っていると相手は狙いやすいんですけど、ちょっとポンポンって出し入れするだけで、相手も動かなきゃいけなくなる。目も動くんで、相手の足が止まるんですよ」
そして遠藤について、こんな思いを口にしたのである。
「J1に上がった2005年に対戦して『なんじゃ、こいつは』と思ったのが遠藤保仁選手。この選手が代表でなかなか出番ないんか。ヤットさんを越えたいって、ずっと思っていた」
古巣のガンバ大阪のコーチとして、独自の感覚を次の世代に伝えてくれるはずだ。
(鈴木誠)