韓国で民主化以降では初となる「非常戒厳令」が宣布され、いまだに政局の混乱は収まらない状態にある。追い込まれた大統領が強硬手段に出た裏には、米国のささやきを頼りに、大敗した総選挙で中国共産党が不正に関与していた情報を暴こうとしたという話も。お粗末な結末を迎えた〝政権クーデター〟の真相に迫る─。
「私を弾劾しようが、捜査しようが、私はこれに対して正々堂々と立ち向かう」
12月12日、国民向けの談話の中で最後まで戦うことを宣言したのは、韓国の尹錫悦大統領(63)だ。
これには国民も開いた口が塞がらなかった。外信部記者が話す。
「7日の談話では、『私の任期を含め、政局安定は我が党に一任します』とうなだれていたのに、一転して早期辞任に応じない方針に転換。与党は秩序ある早期退陣を掲げて国民に理解を求めた矢先、収拾がつかない状況に陥っています」
尹大統領が45年ぶりの非常戒厳令を宣布したのは、12月3日の夜のこと。武装した軍が国会内に突入するなど、まるで映画のような出来事が繰り広げられた。しかし、国会で戒厳解除要求決議が可決され、わずか6時間で沈静化するお粗末な結果に。 強硬手段に出た背景について、外信部記者が説明する。
「22年の政権発足時から少数与党で、最大野党『共に民主党』が過半数を占めていました。野党主導で法案を次々と拒否され、12日の談話でも『野党が国政を麻痺させた。反国家勢力だ』と批判し、非常戒厳の決断を正当化しています」
その他にも、大統領夫人・金建希氏の株価操作疑惑などが拡大し、支持率は17%まで下落して追い詰められていた。
そんな中、新たに浮上しているのが「不正選挙」だ。4月の総選挙で与党は大敗。任期最後まで野党が過半数を占めることになった。
「選挙後に、過激保守ユーチューバーが不正選挙疑惑を指摘。尹大統領は政界で話題になるほど極右系のユーチューブを観ていて、その影響を受けたと疑われています」(外信部記者)
実際、尹大統領はソウルの沖岩高校の1年先輩である金龍顕国防相(5日に辞任)や李祥敏行政安全相(8日に辞任)と戒厳令を計画したとされ、国会に投入した戒厳兵を上回る約300人の兵士が国会突入より先に中央選挙管理委員会など関連施設に踏み込んだ。
「不正選挙の証拠を掴むため、庁舎を占拠して職員の携帯電話を押収したり、選挙関連の資料を入手。電算室で選挙人名簿を管理するサーバーも撮影しています」(外信部記者)
12日の談話で尹大統領は指示を認めた上で、
「民主主義の要である選挙を管理する電算システムが杜撰なのに、国民が選挙結果を信頼できるのか」
と、主張。北朝鮮が選挙をハッキングした疑いも明かしている。
さらに談話では、過去に中国人が関与したスパイ活動に言及。野党が外国人のスパイ行為を処罰できないように刑法改正を防げたと発表した。これに中国側は不満を表明したが、実は、不正選挙の背後に中国共産党の存在があることも、戒厳令の理由と見られているのだ。