ある企業ニュースが、撮り鉄を震撼させている。東邦亜鉛が2025年3月末で、群馬県安中市にある安中製錬所の主要設備を停止するというものだ。大きなニュースとは言えず、しかも撮り鉄とは無関係に思えるが…。鉄道ライターが真剣な表情で解説する。
「安中製錬所は亜鉛を精錬する工場で、精錬に必要な鉱石を工場から福島臨海鉄道の小名浜駅まで、貨物列車で運んでいます。1編成まるまる東邦亜鉛がチャーターしているため『安中貨物』(写真)の愛称がついています。貨車が専用の『タキ1200形貨車』なので、撮り鉄に人気のある貨物なんですよ」
安中貨物は貨車以外にも、撮り鉄を惹きつける魅力があると、この鉄道ライターは言う。
「牽引している『EH500形電気機関車』は東北本線を中心に走っている機関車で、武蔵野線や高崎線を走ることは少ないので貴重です。しかも安中行きの列車は午後のいい時間に西に向かって走るので、順光で撮影できる。簡単に言えば、『映える』列車です」
ただでさえ撮る列車が減っている昨今、安中製錬所の停止によって安中貨物もなくなってしまうのではないかと、撮り鉄は気が気ではないのだ。
「工場を停止すれば、もう鉱石は必要ありません。停止するのは3月で、年度末だからこのタイミングになったのかもしれませんが、同時にJR貨物のダイヤ改正に合わせたとも考えられる。安中貨物はなくなってしまう可能性が高いですね。ただ、安中製錬所は2027年4月以降、亜鉛をリサイクルする事業を始めるので、その時に復活するかもしれません」(前出・鉄道ライター)
もし復活するとしたら、新たな安中貨物はどんな編成になるのか。そんな楽しみを心に秘めつつ、情勢を見守りたい。
(海野久泰)