有馬記念(GⅠ、中山・芝2500メートル)は世界で最も馬券が売れるレースだ。普段、競馬にあまり興味がなさそうな人でも買ったりする。そういう人がひょいと手を出すのが、いわゆる「サイン馬券」だ。そして稀にだが、うまくいくことがある。
例えばアメリカで同時多発テロがあった2001年は、マンハッタンカフェとアメリカンボスが1・2着したが、これなどはサイン馬券の典型的な例として、しばしば取り上げられる。馬単、3連複、3連単がない時代だったので、枠連1-4の2万680円、馬連1-4の4万8650円は、インパクトのある高配当馬券だった。翌日のスポーツ紙に「同時多発テロに引っ掛けて買っていれば獲れた馬券」などと書かれていたのを覚えている。
今年、サイン馬券のネタとして取り上げられているのが、セ・リーグ3位から下剋上で26年ぶりに日本一に輝いた横浜DeNAベイスターズの三浦大輔監督だ。彼の名前が出れば当然のごとく、同姓の三浦皇成が騎乗するプログノーシスがクローズアップされる。勝つのではないか、と。
三浦推奨ネタは他にもある。今年のGⅠは天皇賞・春の菱田裕二(テーオーロイヤル)、ヴィクトリアマイルの津村明秀(テンハッピーローズ)、宝塚記念の菅原明良(ブローザホーン)、スプリンターズSの西村淳也(ルガル)、阪神JFの岩田望来(アルマヴェローチェ)など、初めてGⅠ勝利する騎手が続出した。その流れから、三浦が悲願のGⅠ勝利を達成するのでは…というものだ。
流れで言うのなら、生産者である社台ファームの勢いは見逃せない。前週の朝日杯FSをアドマイヤズームで勝利し、今年のGⅠ勝利数は5勝。今回は4頭出しで臨むが、その中の1頭にプログノーシスがいる。
もちろん、勝つだけの力もある。これまで重賞を3勝しており、春の香港クイーンエリザベスⅡ世C(GⅠ)では、あのロマンチックウォリアーのクビ差2着と健闘した。今回のメンバーでそれだけの走りができる馬は、そうはいないだろう。
最終追いは三浦が騎乗して栗東CWで行われ、直線いっぱいに追われて5F68秒9~1F11秒1をマーク。
「先週も状態の良さを感じたが、今週はさらにトモが良くなった」
これが三浦のコメントだ。
10月26日のコックスプレート(2着)以来の出走となるが、デキは全く問題ない。人気はないだろうが、差しが生きる展開になれば、出番は十分にあるとみた。では、グッドラック!
(兜志郎/競馬ライター)