「それはどうあるべきなのか。それはどういう意味なのか。本当にそれでいいのか。などと、なかば自問自答を繰り返し、最後まで質問への回答をしない。そして口調をゆっくり、詩を朗読するように語る。これで今日からあなたも石破茂」。
9月に行われた自民党総裁選では、最後の挑戦とばかりに自説を封印。候補者が乱立した公開討論では、持ち前の歯に衣着せぬ舌鋒が封印されたことで、そのしゃべりが「石破構文」として揶揄された。冒頭はSNSに上げられた「石破構文講座」だ。思わず「そうの通り」と笑ってしまうが、国会の論戦の場でも相変わらずのあの語りが展開されて、再び耳目を集めている。
12月6日に総理として初めて臨んだ衆院予算委員会で、早速開陳。政治資金の問題で自民党が掲げた案の中に「要配慮支出」なるものが設けられていることについて、野党議員から透明性の確保を妨げかねないとの質問に、最初は「邪推」とハネつけたものの─それを「失礼。『推理』が働こうかと思う」と言い直した後、それにも納得がいかなかったようで、さらに時間をおいてから「『ご懸念』が出ようかと思う」と、貴重な質問時間が削られるような対応を行ったのだ。
遂には10日の予算委員会で立憲民主の長妻昭議員に「最初に結論を言って、後から正論を述べられれば」と詰め寄られる場面も。
これについて、政治ジャーナリストの安積明子氏はこう語る。
「石破さんとしては、言葉を考えながら、誤解を与えないようにしゃべるので、どうしてもクドい話し方になるんです。変に言葉尻を捉えられたくないというのもあるのでしょう。でも、元々ああいったしゃべり方をする人ですから、『石破構文』と言って騒がれていることには、何で今さらとは思ってしまいます。とはいえ、今は何でも時間短縮の時代です。違った見方をすれば、ワンフレーズ・ポリティクスのように、短い言葉で表現することができない人とも言えるかもしれませんね」
あの特徴的な話しぶりは、「熟考」の末とする声もあれば、やはり回りくどいだけとする向きもあり、受け止める人によって様々。しかし、それも話す場所と相手次第によろう。
「自民党総裁選は、実質的には日本の首相を選ぶ場とはいえ、それでも自民党内のトップを決める内輪の場所でもあるから許されたかもしれません。それが国会の場となると、相手は意見が真っ向対立する野党議員という場合もありますから果たしてどうなのか」
とTPOを指摘するのは政治部デスク。その意味では、外交の場ではどうなのだろうか。来年1月20日にアメリカ大統領に就任するあの人に対しては?
「いまだに2人の対面は実現していないので想像するしかありませんが、トランプ新大統領だったらあの回りくどいしゃべり方は嫌うかもしれません。通訳が間に入るといっても、いちいち言葉の意味についてこだわられたりしたら嫌がるでしょうね。また、石破総理は外交マナーやおにぎりの食べ方でも問題になってますよね。やはり総理になると、そういった細かい見え方までが問われるようになる。もはやかつてのような党内野党的な存在ではないので、そこへの配慮は今後とも求められることになるでしょう」(前出・政治部デスク)
前出・安積氏によれば、党内外でも石破を降ろしてやろうという動きはなく、モタつきながらも「意外と長くもつのではないか」という雰囲気だとか。噛み合った議論を行う努力もぜひしてほしいものだ。