今年の「M-1グランプリ2024」(テレビ朝日系)が12月23日に終わった。記念すべき20回大会のチャンピオンは令和ロマン。堂々の2連覇である。そして圧巻の優勝だった。
年末の風物詩として定着した「M-1」。世帯視聴率と個人視聴率はそれぞれ驚異の12.7%と18.0%(ビデオリサーチ調べ、関東。以下同)で、歴代5位の数字だった。
一方で、12月10日に放送された「女芸人No.1決定戦 THE W 2024」(日本テレビ系)だが、はたして優勝した女芸人は誰だったか、ご記憶の方はいるだろうか。答えは、にぼしいわし(香空にぼし、伽説いわし)である。もともとは吉本興業に所属していたものの、退所。現在はフリーで活動している、芸歴12年目のコンビなのだが、正直言って、もう記憶が薄れつつある。ちなみに「THE W」の個人視聴率は4.1%だった。
あるいは10月に開催されたのが、日本一のコント師を決める「キングオブコント2024」(TBS系)。17代目王者に輝いたのが、結成16年目のラブレターズ(ASH&Dコーポレーション所属)だった。2年連続5回目の決勝で悲願の栄冠を勝ち取った彼らをネタ番組ではチラホラ見かけるが、平場のバラエティー番組に登場する機会は少ない。平均個人視聴率は6.1%だった。
「M-1」では令和ロマンに加え、準優勝のバッテリィズの評価が一気に高まり、オファーが殺到しているという。一体、この「M-1」の「賞レース王者感」は何なのだろう。なぜ「M-1」だけが大きな関心を持たれるのか。バラエティー番組に携わる放送作家の見解を聞こう。
「まずは『M-1』というブランド。サンドウィッチマンしかり、オードリーしかり、ここから羽ばたき、人生が激変したコンビは数知れず。視聴者はその瞬間に立ち会ってきたし、目の当たりにしてきました。対して『キングオブコント』や『THE W』では、そのカタルシスを味わうことが少ない。そして開催日も大事です。『M-1』は極力12月20日前後ということで、より『年末の風物詩』を感じさせる恒例行事となりました。そしてここで飛躍したコンビは時期的に、芸人が大挙して出るような年末年始の番組にすぐ仕込むことができます」
対する「キングオブコント」の開催は10月と、スペシャル番組のひとつという位置づけでしかなく、「THE W」も12月10日前後という中途半端な日どり。いずれも、もし注目されたとてしても、年末年始の番組収録まで話題性が続くかどうか不透明で、爆発的なオファー殺到とはいかない要素があるのだ。
「ほかにも『M-1』は、審査員の顔ぶれや審査をめぐる賛否、ステージに出て来る際の出囃子や、ジャッジの効果音、オープニングの煽りVTRなど、演出面でのギミックが凝りに凝っている。後追いで開催された『キングオブコント』や『THE W』とは比較にならないのです」(前出・放送作家)
こうしたことから考えても、「M-1」は未来永劫、賞レース最強ということになるだろう。
(永田紀夫)