男性の体が老化する順番を、俗に「ハマラメ」などと言います。まず歯(ハ)がダメになり、マラ(下半身)がダメになり、目(メ)がダメになる順番を表している言葉です。「そうじゃない、ハメマラ」だという人もいるわけですが、「歯」と「目」と「性機能」は老化の第一歩と考えられているということです。
若い時はスポーツなど、筋肉を激しく使う運動で鍛えるのもいいです。しかし50歳を超えたら老化を止めるのではなく、進むペースをゆっくりとさせることが肝要だと思います。
まず「目」の老化を遅らせるお話をします。
2~3年前にある雑誌で加山雄三さんと対談したのですが、彼は「目も歯も現役だ」とおっしゃっていました。さすがにもうひとつのお話にはなかなか至りませんでしたが(笑)‥‥まぁ推して知るべしというところでしょう。
ここで言う「目」とは、主に「老眼」と皆さんが呼んでいる症状です。正式には「老視」と呼ぶのですが、加山さんは老視とも無縁だと言うのです。
彼は私の1歳年下の1937年生まれで、対談した当時で75歳。老視は40~60代初めに自覚することが多いと言われていますが、恐らく、趣味であるヨットにたびたび乗り、広大な海を眺め続けたことが功を奏しているのでしょう。「遠景を見ると目がよくなるのは都市伝説」などと言われていますが、加山さんの目が悪くなっていないところを見ると、あながちウソとは断定できないと感じさせられました。
ちなみに、私もいまだに老視にはなっていません。私が治療に用いている自己治癒力を使う同種療法、ホメオパシーに関する書物を開き、裸眼で英語の辞書並みの小さな文字を読むと、「読めるんですか!?」と患者さんに驚かれることもしょっちゅうです。
老視ではない代わりに近視ではありますが、小さい文字を読む時は眼鏡を外せば、日常生活に何ら不自由しません。同年代の仲間の中には、白内障で手術する人もちらほらいますが、その気もありません。
私が老視にならないのは、呼吸により体内の“気”の流れをよくする気功のおかげだと信じています。
江戸中期の禅僧、白隠慧鶴〈はくいんえかく〉禅師も、呼吸法など実践的治療法を説いた著書「夜船閑話」の中で、このように語っています。
「70歳を超えたが老眼鏡も使わないし、日々の法話の回数も減っていない。これは呼吸法のおかげだ」
中国で生まれた「禅」を日本に広め、「禅(臨済禅)の中興の祖」と呼ばれる白隠禅師が、老眼鏡を使わないのは呼吸法のおかげだと明言しています。なぜ気功が眼の老化に効果的なのか──そのことの前に「呼吸」と「身体」の関係について説明したいと思います。
私が気功を始めたのは、82年。埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立し、病院内に気功の道場を作って患者さんと一緒に始めました。46歳で始め、今年で33年目になります。
◆プロフィール 帯津良一(おびつ・りょういち) 医学博士。東大医学部卒、同大医学部第三外科、都立駒込病院外科医長などを経て、帯津三敬病院を設立。医の東西融合という新機軸をもとに治療に当たる。「人間」の総合医療である「ホリスティック医学」の第一人者。