気功を続けてきて実感していることがあります。それは、気功などの呼吸法は、長期間続けないと効果を発揮しない、という事実です。1~2年程度で体質ががらりと変わる、というものではないのです。始めたとしても即結果を求めて焦ってはいけません。即効性を狙わず、10年、20年先を見据えましょう。
「気功」という言葉を聞くと、実践する以前に、怪しげなスピリチュアルな要素や自己啓発をイメージして、アレルギー反応を起こす人もいるかもしれません。
実際に私も、西洋医学に行き詰まりを感じ、中国医学を取り入れるべく中国へ渡るまでは、気功に関する解釈を聞いても、本音ではあまり感心していませんでした。なぜなら、呼吸法というのはスピリチュアルなもの、宇宙を相手にするものです。ならば筋肉とか内臓などといった物理的なものに効果は還元されない、と思っていたからです。
しかし、私は中国で、たった2本の「ハリ麻酔」で肺ガンの手術を行うこと、麻酔の効果を上げるために事前に気功を行うことを目の当たりにしました。そこで気功というものを、医学的に再評価しなければならないと思うようになりました。
そして、中国で気功の本をどっさりと買い込み帰国しましたが、それらの書物で、私は以下のような気功の本質を学んだのです。
気功には、「調身、調息、調心」という三要素がある。というよりは、この三要素さえあれば、全て気功なのです。白隠禅師が禅で用いた呼吸法「丹田呼吸法」は現在でも伝えられています。日本人に身近な「禅」にもこの三要素があるので、立派な気功ということです。
2年ほど前から呼吸でダイエットを行う「ロングブレスダイエット」が流行しました。やはり呼吸と肉体は密接な関係があると考えていいでしょう。
気功は呼吸によって“気”の流れを整える、“自立整体”と捉えれば、抵抗が少なくなるかもしれません。
私は患者さんとはもちろん、1人でも気功を行っています。朝の3時半頃、病院に行って少し仕事をして、5時から5時半ぐらいの間に道場に行き、1回に4~5分のごく短時間。
一度に長時間行うよりは、短時間の積み重ねのほうが、結果的に効果が出ると思っているからです。
私が実践している気功とは異なりますが、誰でも実践できる超カンタン「三呼一吸」呼吸法を紹介しましょう。
といっても別に難しいことはなく、フッ、フッ、フーッと3回連続して息を吐き(鼻でも口でも可)、鼻から吸うだけです。
長さは意識しなくてもよいでしょう。元手がいらず、いつでもどこでもできるのが利点です。
体の隅々まで酸素が行き渡り、血液の循環がよくなります。また、副交感神経が優位になるため、自然治癒力も高まるのです。各臓器の老化の進行を緩やかにしてくれます。結果として目の健康にもつながるということです。
◆プロフィール 帯津良一(おびつ・りょういち) 医学博士。東大医学部卒、同大医学部第三外科、都立駒込病院外科医長などを経て、帯津三敬病院を設立。医の東西融合という新機軸をもとに治療に当たる。「人間」の総合医療である「ホリスティック医学」の第一人者。