中居正広のスキャンダルに自局の幹部が関与していると報じられるも、早々に「いっさい関与しておりません」と声明文を出したフジテレビ。知らぬ存ぜぬでやり通せると思っていたのだろうが、「フジ・メディア・ホールディングス」の株式7%を保有する米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」から、第三者委員会での調査を求められ、有耶無耶作戦は失敗に。
結局、港浩一社長が会見を開くことになったわけだが、外国からの圧力でようやく動き出すのは、ジャニー喜多川氏の性加害問題と同じ流れ。あの問題から何も学んでいないということだ。
詳細はいまだ不明とはいえ、起こった問題は真摯に受け止め、覆い隠すことなく事実を究明せねばならない。フジテレビはかつて「楽しくなければテレビじゃない」をスローガンに掲げていたが、「楽しさ」を追求するあまり、「真面目」を欠くようになってはいなかったか。今一度、おのれを見つめ直す必要がある。
そんなフジテレビに欠けていた「真面目さ」を今、唯一感じられるのは、上垣皓太朗アナ。2024年入社の新人だ。が、「新人離れ」などという言葉では足りぬほどのアナウンス技術に、2001年生まれの24歳とは思えない落ち着いた見た目で、もはやベテランの貫禄すら漂う。「2024年 好きな男性アナウンサーランキング」で、入社1年目にして第4位と大人気だ。
しかし、あくまでベテラン感は、アナウンサーとしての力量と、西山喜久恵も思わずイジッた(その結果、批判を受けた)風貌から醸し出されるだけで、その中身は「真っすぐに仕事に取り組む、愛すべき若者」そのもの。
それがよくわかったのが、1月16日の「フジアナch.」だった。「新人・上垣皓太朗の古地図散歩」と題し、生野陽子アナとともに散歩ロケをするという企画だ。
「有吉くんの正直さんぽ」を引き合いに出し、
「散歩番組の先輩である生野先輩に教わる日です」
と今回の趣旨を説明。散歩の舞台となる小伝馬町界隈については、
「私が調べたところによると(生野先輩は『有吉くんの正直さんぽ』で)10回ほどはお越しに(なられている)」
なんと、事前調査はバッチリだ。その後に向かった「小伝馬町牢屋敷展示館」では、周辺の歴史を詳しく解説。その知識に生野アナが驚くと上垣アナは、
「大学の時に地理歴史の教員免許は取ったので、社会と国語は教えられます」
さらに、人形町に移動。現在は日本橋にある高級フルーツ専門店「千疋屋」が、かつてはその場所に店を構えていたことを、クイズなども挟み、上垣アナが説明する。これまたその博学ぶりに生野アナが感嘆すると、
「この番組、専門家の方が不在ということで、3週間ほど前からかなり勉強しています」
続いて現在の「千疋屋総本店」へ移動し、2人で食事をすることに。メニューを見て高級フルーツのデザートの値段に驚きながら、新人研修の話題となった。
「(生野さんには)研修でもお世話になりました。講師として食リポを教えていただきました」
そう言って頭を下げる上垣アナに、
「今日、だからバッチリ確認するからね」
と先輩風を吹かす生野アナ。すると上垣アナが、
「5月の新人研修で、生野さんに教えていただいたことを思い出そうと思って、あの時のノートを持ってきたんです」
ノートに書かれた「食リポを制する者は、リポートを制する」の一文を読み上げると、生野アナは大笑いだ。そんなやりとりを見ても、どちらが先輩か分からない。
生野アナが「なんでアナウンサーになった?」と質問すると、
「アナウンサーの、特に防災報道とかに取り組まれている姿に感銘を受けて」
もうとにかく、何事においても真面目。そしてイヤミがない。今後、フジテレビが信用を回復できるとしたら、上垣アナのこの真摯な態度を見習うべきだ。いっそ、上垣アナを社長にして、イチから出直すのはどうだろう。
(堀江南/テレビソムリエ)