まさに満身創痍、体力も気力も限界に達した横綱・照ノ富士(伊勢ケ浜部屋)が、ついに引退した。と同時に日本相撲協会は、年寄・照ノ富士を承認した。
照ノ富士は昨年の名古屋場所で10回目の優勝を決めた後、秋場所、九州場所と2場所連続全休。3場所ぶりに出場した今場所は初日に若隆景に敗れるなど、不安なスタートとなった。4日目に2敗目を喫すると、5日目の1月16日から休場。今場所の再出場はせずに膝と腰の治療に専念し、来場所での復活を目指すかと思われたが、かなわなかった。
「師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)は、今年7月に定年を迎えます。それまでは現役として頑張りたい思いがあったでしょうが…」(相撲部屋関係者)
今後は伊勢ケ浜部屋で部屋付き親方として後進の指導にあたるが、将来的な部屋継承は既定路線とされている。とはいえ、引退ですんなり継承とはいかないのはなぜか。先の相撲部屋関係者が言う。
「横綱の特例で5年間は現役四股名のまま部屋付き親方として活動できますが、照ノ富士はまだ年寄株を取得できていませんからね。ところが相撲協会は慢性的な年寄株不足の状態。年寄名跡は105ありますが、現在の空席は2つです。そのうち桐山は同じ伊勢ケ浜部屋の宝富士が持っており、引退後に襲名することになる。もうひとつの出来山は、元出羽の花が所有。出羽海一門なので、伊勢ケ浜一門の照ノ富士が取得するのは難しい。照ノ富士は5年間の特例期間を終えるタイミングで、年寄株を譲渡してもらうことになるのでは」
であればそれまでは、誰が部屋を率いることになるのか。スポーツ紙記者が解説する。
「現在、伊勢ケ浜部屋には部屋付き親方が3人います。このうち元白鵬の宮城野親方が継ぐということはないでしょう。元弟子の暴力問題が尾を引いて、宮城野部屋は閉鎖中であり、伊勢ケ浜部屋が預かっている状態ですからね。元石浦の間垣親方は宮城野親方の弟子。宮城野部屋復活の際には、ついていくことでしょう。残りの元誉富士の楯山は、部屋の継承を固辞しているという報道があるので、どうなるか。宝富士を引退させて伊勢ケ浜親方と名跡交換して、ワンポイントで継いでもらう可能性もありそうです」
伊勢ケ浜親方の定年まで約半年。継承問題はどう決着するか。
(石見剣)