長年にわたり繰り広げられてきた真贋論争に、いよいよ終止符が――。
その「トリノの聖骸布」と呼ばれる布は、1353年にフランスのリレで発見された、縦4.35メートル、横1.1メートルのリンネル。イエス・キリストの遺体を包んだとされる、通称「トリノの聖骸布」だ。
その後、1453年にサヴォイ家の手に渡り、トリノに移った後、1983年にサヴォイ家からローマ教皇に所有権が譲渡された。現在はトリノ大司教の管理下に置かれている。
数十年にわたり、多種多様な科学的調査が行われてきたにもかかわらず、布がいつの時代に作られ、本当にイエスが纏ったものなのか、その真偽は長い間、ハッキリしなかった。宗教ジャーナリストが語る。
「1988年には聖骸布の一部をサンプルとして、3つ研究所で放射性炭素年代鑑定が行われました。その結果、布が製造された時期は1260年から1390年の間、つまり中世の時代だとされ、イエスの遺体を包んだという説はもろくも崩れ去ってしまったのです」
ただ、科学者らによれば、リンネルの布を放射性炭素で年代測定することは極めて難しく、さらに鑑定に使用された布が長期間、煙などにさらされたこと、また修復された部分がある可能性があるため、当初から放射性炭素年代測定には批判的な意見が多かったという。
そこで2013年、改めてDNA鑑定やCTを用いた詳細な鑑定を実施。すると今度は前回の鑑定を覆す、この布が紀元前33年頃のものであるとの結果が出たのである。鑑定にあたった科学者からは「布から分析した人間の手、首、足には貫通した跡があり、遺体は180センチの男性」との推定が出されたことで俄然、本物である可能性が高まった。とはいえ、これまた鑑定結果に懐疑的な科学者は多く、見解は真っ二つに分かれることに。
そんな中、今度はイタリアの研究者らが広角X線技術(WAXS)を用い、リンネルのセルロースの自然な劣化を測定。布の製造時期特定を行ったところ、イスラエルで発見された1世紀のリネン布と互換性があると判明したのである。さらにはヨーロッパに運ばれる前の約13世紀にわたり、温度約23度、相対湿度55%で保管されていたことまでもが、明らかになった。
科学者らはこの研究結果を「Heritage」誌に発表。英「デイリー・メール」紙などでも大々的に報じられ、バチカン関係者らは歓喜の声を上げたのだった。
その後、バチカン教皇庁が配信する「バチカンニュース」ドイツ語版で「トリノの聖骸布」が本物だとの最新測定結果が発表されている。
(ジョン・ドゥ)