本サイトでは以前、UFOや宇宙人を崇拝し、カルト化した宗教団体を取り上げたことがあるが、その中にはイエス・キリストとUFOを関連づけるカルト団体が少なくない。なぜ彼らはキリストとUFOの間に因果関係がある、と考えるのか。その理由のひとつが、世界各地の聖堂などに残されている、イエスを描いた宗教画に登場する「謎の物体」の存在だ。
代表的なものとしては、ローマのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の建立を記念して制作された祭壇画。大聖堂建設の由来となる伝説「雪の聖母の奇跡」を描いたものだが、UFOの大群を引き連れたイエスとマリアの姿がはっきりと表現されている。
あるいは15世紀にルネサンスの画家フィリッポ・リッヒにより、フィレンツエのヴェッキオ宮殿に描かれた「聖母と聖ジョバンニーノ」にも、聖母子と幼い聖ヨハネの左後ろに、確かに謎の飛行物体が浮かんでいる。
美術の専門家によれば、これらの絵が描かれたルネサンス期には、光線を放つアーモンド型の物体がしばしばモチーフとして登場している。とともに、球体が描かれているのだが、おそらく球体は地球そのものを指すのではないかとされる。そしてその球体の運命や宿命が、イエスに委ねられていると。つまり、このUFOらしき物体は、聖書における象徴主義と何らかの因果関係があるとみられるのだ。
中でも「キリストの処刑場にUFO飛来か」と連想させるのが、バルカン半島にあるコソボの世界遺産、デチャニ修道院で14世紀に描かれたとされるフレスコ画「キリストの磔刑」だ。
この修道院は、セルビア王ステファン・ウロシュ3世デチャンスキによって建造されたロマネスク様式の大聖堂で、世界有数のビザンチン美術のフレスコ画が残されていることで知られる。
この「キリストの磔刑」は、ユダヤ教を批判したイエスがローマ皇帝により十字架に磔刑された、という新約聖書の伝説を描いたものだが、この絵にも左上と右上に宇宙船のような物体が見て取れる。これは月と太陽を擬人化したものとの説があり、イエスが磔にされた際、突如として青空に暗雲が垂れ込め、あたりが闇に覆われた…という聖書の一節が描かれている、ともいわれるのだが…。
ほかにもイエスとUFOらしき物体を描いたフレスコ画が多く存在することから、カルト団体を含め、UFO専門家と美術専門家の間では侃々諤々の議論が続いている。
(ジョン・ドゥ)