最近は芸人としてだけでなく、日本史に詳しい識者としても活躍中の松村邦洋。このたびシリーズ4冊目となる大河ドラマ本を上梓した。今回の主役は横浜流星が演じる蔦屋重三郎。一体どんな人物なのか。そして物語の見どころは? 天才テリーがくまなく聞き出した。
テリー まっちゃん、また大河ドラマの本を出したんだね。
松村 はい、ありがたいですね。「鎌倉殿の13人」「どうする家康」「光る君へ」に続いて4冊目で。今回の大河は「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」というタイトルですね。
テリー 実はこの対談が出る頃にはもう3話まで放送されてるんだけども。改めて今回の主人公はどういう人なんですか。
松村 今回の主役は蔦屋重三郎という人で、通称は「蔦重(つたじゅう)」。今で言うと凄腕の出版プロデューサーですね。戯作本とか黄表紙とか狂歌、あとは浮世絵とか、いくつもの大ヒット作を仕掛けた人で、生まれは江戸の吉原です。
テリー ということは、主な物語の舞台は吉原。
松村 そうなるでしょうね。で、蔦重は「親なし、カネなし、画才なし」なんですけど、その吉原で大物作家や文化人たちと人脈を築いていって、喜多川歌麿や葛飾北斎、山東京伝、東洲斎写楽といった若い才能を発掘し、育てていくんです。
テリー まだ世に出ていない才能ある人たちを引っ張り上げて有名にしたんだ。
松村 だから、テリーさんみたいなもんですよね。「浅ヤン(浅草橋ヤング洋品店)」で浅草キッドとかルー(大柴)さん、清水圭さんにも「ちょっとみんなで一緒にやらないか」って声かけて。
テリー いや、俺の話はいいんだけども(笑)。ということは、蔦重という人は出版社の人なの?
松村 最初は貸本屋から始めて、後に書店を開きます。そこで「吉原細見」っていう吉原のガイドブックを売り始めるんですけど、蔦重はそれを売るだけじゃなくて、中身の編集作業も始めるんですよ。
テリー 売るだけじゃ飽き足らず、自分で作り始めちゃった。
松村 そうですね。何しろ生まれが吉原ですから、そのネットワークを生かして、あちこち取材して最新情報を入手して作ったみたいです。それを正月と7月の年2回、発行してました。だから、歌舞伎町の入り口で風俗情報誌を売るみたいなもんですよね。
テリー なるほど、すごく頭がいいし、商才もあったってことなんだね。俺さ、実は大河ドラマって、ほとんど見たことがないんですよ。というのも裏で「元気(天才・たけしの元気が出るテレビ!!)」をやったり、その前はテレビ東京でライオンを虎にしたりしてたから、全然見る習慣がないというか。
松村 そうですよね。
テリー だから、何で今、NHKが蔦重にスポットを当てたんだろうっていうのが気になるんだけど。
松村 これは取材したわけではないので、ただの僕の想像ですけど。蔦重が生きたのは、当時の政治を司る老中が田沼意次から松平定信になった時代で、今で言うコンプライアンスがすごく厳しくなった時代なんですよ。それで、蔦重は1回潰れそうになるんですけど、取り締まられたら「何か別にやり方があるんじゃないか」っていろいろ考えて、また這い上がってきた人なんです。だから、そのあたりが今の時代に通じるんじゃないかなと思いますね。
ゲスト:松村邦洋(まつむら・くにひろ)1967年、山口県生まれ。大学在学中に出演したモノマネ番組で敢闘賞を受賞。その後、テレビ西日本でケーブルさばきのアルバイトをしていたところ、片岡鶴太郎に見出され、芸能界入り。1988年、大学を中退して上京。1992年、「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」(日本テレビ系)で披露した高田文夫氏のモノマネ「バウバウ」でブレイク。同年スタートの「進め! 電波少年」(日本テレビ系)や1993年スタートの「松村邦洋のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)などで人気芸人の地位を確立する。現在は「アッコにおまかせ!」(TBS系)、YouTube「松村邦洋のタメにならないチャンネル」などで活躍中。最新著書「松村邦洋 懲りずに『べらぼう』を語る」(プレジデント社)発売中。