1993年にスタートしたJリーグでは、様々な大物外国人選手がプレーした。とりわけ衝撃的だったのは、現役ブラジル代表だったレオナルドのデビュー戦だ。
アメリカW杯後に鹿島アントラーズに入団したレオナルドは1994年8月13日、カシマスタジアムでのヴェルディ川崎戦でJリーグデビューを果たした。まだ24歳という若さだった。
レオナルドは試合開始早々から次元が違うテクニックを見せつけたが、特に鮮烈な印象を残したプレーがある。右サイドにいたレオナルドが左足アウトサイドで逆サイドにロングパス。ボールは美しい弧を描き、一発でサイドチェンジに成功したのだ。
見たことがないようなボールの軌道に、試合を視察に来ていた横浜マリノスの清水秀彦監督は「こんなの反則だろ!」と叫び、次元が違うプレーに驚嘆した。その後の活躍はご存じの通りだ。レオナルドは素晴らしいプレーで、鹿島の躍進に大きく貢献した。
アメリカW杯でブラジルが優勝を決めた翌日、レオナルドに話を聞く機会があった。バルセロナやACミランからのオファーを断り、なぜJリーグの鹿島に移籍するのかと聞いたところ、
「なぜかって、あのジーコからオファーがあったんだよ。それは断れないよ」
と笑顔で話したのである。レオナルドに続き、翌年には同じくジーコの尽力によって、現役ブラジル代表のジョルジーニョが鹿島に移籍した。ブラジルにおけるジーコの影響力の強さを、改めて感じたものだ。
(升田幸一)