テリー じゃあ、田沼意次という人は出版に寛容な人だったの?
松村 出版に寛容というか、僕らの時代はいろんなところから賄賂をバンバンもらって、「悪徳老中」の代表みたいなイメージですけど、実際は産業を興して、商業を盛んにして豊かな暮らしができるようにあれこれ手を打った人なんですよね。「アベノミクス」ならぬ「タヌマノミクス」で経済の活性化を目指した。
テリー へぇ。
松村 やっぱりテレビ番組でも「お金をバンバン使って、いい番組どんどん作ろうよ」「お金のことは任せてくれ」って言ってくれるプロデューサーのほうが、僕らみたいな出演者にはありがたいじゃないですか。
テリー そりゃそうだ。
松村 モノマネ番組でダチョウ倶楽部さんが優勝した時に、200万円だった賞金を「3人だから300万円にしよう」って上げてくれたプロデューサーの方がいたんですけど、いいプロデューサーって結構お金使う方ですよね。中には使い込んじゃってトバされちゃった人もいましたけど。
テリー 田沼意次はそういうタイプなんだ。
松村 そうですね。それが失脚してしまって、次に老中になったのが松平定信。この人が始めた「寛政の改革」が庶民に厳しくて、蔦重が関わっていた出版業界、エンタメ業界にもすごく規制がかかるんです。
テリー なるほど。つまり蔦重と政府との攻防みたいなところが見どころになっていくんだろうね。
松村 そう思います。
テリー 俺ね、まっちゃんがNHKラジオでやってる「DJ日本史」をいつも聴いてるんですよ。
松村 うれしいですね。
テリー すごく歴史に詳しいし、博学じゃないですか。何で江戸が好きになったの?
松村 1600年の関ヶ原の戦いから徳川家は15代も続いて、260年ぐらいの盤石な世を作ったわけじゃないですか。骨組みがしっかりしているということは組織がしっかりしているし、身内も潤うっていうことですから、それが250年以上も続くって、やっぱりすごいなと思うんですよね。ジャイアンツだってV9ですからね。
テリー 徳川家の中では特に誰が好きなの?
松村 僕は家康ですね。
テリー どのへんが?
松村 やっぱり我慢した人ってすごいですよね。若い頃は人質ばっかりで、これは運のポイントが貯まってるなって。
テリー 子供の頃の家康は人質として今川義元や織田信長のところで育ったんだよね。
松村 テレビでもよく怒られてたADさんが出世されてますもん。「おい、これやっとけ、馬鹿野郎」って言われて、「わかりました」って我慢して仕事してたADさんが制作会社4つぐらい持ってる社長になってたり。羽振りがいいですね。理不尽なことをされればされるほど運が貯まって。我慢は運のマイレージですから、ポイントが貯まってるなって思いますね。
テリー 例えば、もし織田信長が本能寺で殺されなかったらどうなってたの?
松村 殺されてなかったら、織田家の世襲みたいなものがあったかもわかりませんね。
テリー 城跡とか見ると斬新じゃないですか。考え方とか着てる洋服なんかも含めて。
松村 新しもの好きですよね。
テリー 天才肌だからあんまり長くもたなかったのかもしれないけど。
松村 ひょっとしたら世界統一してるかもしれませんね。まだアメリカもできてないような時代ですから。「日ノ本は家康、お前に任せる」って言って、巨大コンツェルンで世界征服を狙ってたかもしれないですね。
ゲスト:松村邦洋(まつむら・くにひろ)1967年、山口県生まれ。大学在学中に出演したモノマネ番組で敢闘賞を受賞。その後、テレビ西日本でケーブルさばきのアルバイトをしていたところ、片岡鶴太郎に見出され、芸能界入り。1988年、大学を中退して上京。1992年、「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」(日本テレビ系)で披露した高田文夫氏のモノマネ「バウバウ」でブレイク。同年スタートの「進め! 電波少年」(日本テレビ系)や1993年スタートの「松村邦洋のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)などで人気芸人の地位を確立する。現在は「アッコにおまかせ!」(TBS系)、YouTube「松村邦洋のタメにならないチャンネル」などで活躍中。最新著書「松村邦洋 懲りずに『べらぼう』を語る」(プレジデント社)発売中。