懲りないことはまさに、この人のことだろう。陸上男子400メートル障害の日本記録保持者として「走る哲学者」と呼ばれた為末大だ。
それは2014年9月、自身のツイッターに書き込んだ次のようなつぶやきが原因だった。
〈アメリカ人が着物を着ても最後の最後は馴染みきれない〉
〈悲しいかな、どんなに頑張っても日本で生まれ育った人がヒップホップをやるとどこか違和感がある〉
当然ながら、多くのヒップホップ・ファンから〈お前、何様のつもりなんだ〉 と大ブーイングを食らったのである。
2020年4月にも緊急事態宣言発令の翌日に、日本経済新聞が報じた「朝の山手線、乗客者35%減どまり 接触8割減に現状遠く」と題する記事について、〈出勤しちゃうんだ〉と余計な投稿をしてしまう。医療従事者らから〈想像力に欠ける〉と猛批判を浴びて大炎上となった。
その後もストレートな表現を用いた投稿を繰り返し、一時はツイッターのアカウントが凍結された。
しかし、それでもどこ吹く風で、2024年6月28日、新潟市での陸上日本選手権開催中、またもや炎上の種をバラ撒いたのである。
〈みなさん、時代は都知事選より陸上日本選手権ですよ!〉
むろん、日本選手権(6月27日~30日まで開催)を盛り上げるために書き込んだのだろうが、案の定、猛反発を食らう。
〈いやいや、都知事選も大事だろ!〉
〈普通、陸上選手権と都知事選を比較するか〉
〈期日前投票をしてから日本選手権へ行きましょうね、じゃダメなのか〉
といった具合だ。しかも皮肉なことに、海の向こうではサッカー・フランス代表のキリアン・エムバペが記者会見で、6月30日のフランス国民議会選挙に触れて、次のように主張したのである。
〈サッカーと政治を一緒にするなと言われるけど、ここでは試合よりも重要な状況について話しているんだ。私たちの国の状況は悲惨で、私たちは行動する必要がある〉
まさにエムバペの圧勝だったのだが、スポーツ紙記者は首をかしげながらこう語る。
「大会をアピールしたい気持ちはわかりますが、大会の開催は6月27日から30日で、場所は新潟県ですからね。それが7月7日に投開票がある東京都知事選とどう関係があるのか。いずれにせよ、大切な1票を持つ有権者として、選挙を軽視したような発言に、批判が集中してしまいました」
もしエムバペがその投稿を目にしていたら、なんとコメントしたのだろう。
(山川敦司)