今のご時世にこんな「大問題発言だらけの映像」を、よりによって公式SNSに、ノーチェックのままアップするとは…。
そんな驚愕動画が北海道日本ハムファイターズの球団公式Twitterで公開されたのは、2021年4月11日のことだ。
試合前にベンチ前で行われた、選手らによる円陣シーンをとらえたもので、
「一昨日と昨日勝てて、今日勝てば今シーズン初の3連勝ということで、全員で勝ちにいきましょう。さぁ、いこう!」
そう「声掛け」する万波中正に対し、他の選手らの反応は「なんで?」「ひとりでやれ、お前」と、なぜか冷ややかだ。さらに、とある選手が「日サロ(日焼けサロン)行きすぎだろ、お前」と発言する。すると「それはまずい」と言う声までが、動画にはバッチリ収められていたのである。
この動画がアップされた当時は、ファンの間ではスルー状態だった。ところが中田翔による同僚選手への暴行と出場停止処分によって、8月に入ってこの動画がクローズアップされることに。「これは完全な人種差別発言」「人種差別にパワハラで最悪」などなど、厳しい声が続出する騒動に発展したのである。
万波は2000年4月あ7日生まれの、東京都練馬区出身。横浜高校時代には通算40本塁打の活躍で、2018年のドラフト4位で日本ハムに入団した。
「父親はアフリカのコンゴ民主共和国出身で、母親は日本人。192センチ、97キロと体格に恵まれ、身体能力は抜群。2歳上の姉も砲丸投げの東京都選手団選手として、ジュニアオリンピック陸上への出場経験を持つアスリートです」(スポーツ紙記者)
試合中はベンチから大声でチームを盛り上げる万波だが、そんな彼の表情を、褐色の肌の色を揶揄するような発言で曇らせたのはいったい誰なのか。
SNS上では犯人探しが始まったが、数人の候補は挙がるものの、いずれも確証には至らず。日本ハムは8月18日に「誤解を招く可能性がある」として動画を削除したものの、これで事態が収まるはずもない。
削除から10日以上が経過した8月31日、川村浩二社長名で、ようやく動画掲載を謝罪する文書を公開したが、もはやあとの祭り。猛烈な批判の声に晒されることになったのである。前出のスポーツ紙記者が言う。
「日本ハムは、中田の暴力問題による無期限出場停止処分後も、記者会見を行わぬまま、9日後に巨人へ無償トレード移籍させ、批判を浴びた矢先の出来事でした。この謝罪文にしても『確認が至らないまま球団公式ツイッターでそのシーンを公開したことは、当球団の管理体制が不十分でした』と、あたかも差別発言に問題があるのではなく、差別発言を確認せず公開したことが問題だった、ととれる。まさに本末転倒です。万波に心の傷を負わせた責任を、重く受け止めるべきでした」
この件が影響したかどうかは定かではないが、この年、日本ハムは55勝68敗20分でパリーグ5位という結果に終わり、栗山英樹監督の退任に花を添えることはできなかったのである。
(山川敦司)