遡ること13年、2011年4月30日にロシア・モスクワで行われた、フィギュアスケート世界選手権、最終日。日本勢初の連覇を狙う浅田真央は、前日の女子ショートプログラム(SP)で、最大の武器であるトリプルアクセルに失敗した。フリーでも挽回できず、世界選手権では自己最低の6位という不本意な成績で大会を終えることになった。
連覇がかかっていただけに、本人の落胆ぶりは痛々しいほどだったが、そんなタイミングで翌5月1日、タレントのラサール石井がTwitterで〈ちょっと暴言吐きます〉と前置きした上で耳を疑う、いや、目を疑うような、とんでもない文章を綴ったのである。
〈浅田真央ちゃんは早く彼氏を作るべき。エッチしなきゃミキティやキムヨナには勝てないよ。棒っ切れが滑ってるみたい。女になって表現力を身に付けて欲しい。オリンピックまでにガッツリとことん!これは大事〉
現在ほどではないにしろ、セクハラが社会で問題視され始めていた時期だ。そんな状況下のこの「大問題発言」が大炎上したことは言うまでもない。
さすがにヤバイと思ったのか、ラサールは再びTwitterを更新。女性アスリートの場合、少女から成人へと成長する過程で、体や精神が変化しタイムが落ちてしまうことがある一方、表現力が高まることもあり、プラス・マイナスそれぞれに大きな変化が現れることがあるとして、次のように釈明。
〈その時点で個に集中してストイックに練習に打ち込み乗り切るか、日常は日常で切り離し普通の生活を送ることで乗り切るか、二つに分かれるとすれば、私は後者を支持したい。恋愛もsexも人間には欠くべからざる行為だ。そういった日常の発露としてアートやスポーツもあるものだと私は思っているからだ〉
だが、この発言が火に油を注ぐことに。当然ながら〈女性アスリートに対して最低最悪の発言〉〈下品で幼稚!信じられない〉〈完全にセクハラ!訴訟レベルですね〉といったコメントが嵐のごとく吹き荒れた。
結局、5月2日午後に、ラサールは謝罪に追い込まれる。
〈ご批判は当然と痛感しています。全女性の皆様、お名前を出してしまった各選手の方々、関係者各位、何より浅田選手ご本人とファンの皆様に心より謝罪いたします〉
あえなく発言削除という、トホホな結末を迎えることになったのだ。
そんな騒動から10年後の2021年3月。女性蔑視発言で東京五輪・パラリンピック実行委員会会長を辞任した森喜朗元首相に対し、ラサールがTwitter上で〈日本の恥晒し〉〈座敷牢に入れて…〉などと強烈に批判した。
「同調する声も一部にはありましたが、大半は『いやいや、あんたが言うか』『こりゃ学習能力ゼロだわ』といった大ブーイングでしたね」(スポーツ紙記者)
物言えば唇寒し秋の風。なんとも情けないブーメラン騒動となったのである。
(山川敦司)