野球界広しと言えど、ヒーローインタビュー中にブチギレし、客席に向かって悪態をついた選手は、そうザラにはいないはずである。
その男こそが、阪神タイガース一筋の赤星憲広だ。5年連続で盗塁王のタイトルに輝き、セ・リーグ記録を樹立するも、現役生活9年で突然、引退を表明してファンを驚かせた。
問題の発言があったのは、2008年5月24日、福岡ドームで行われたセ・パ交流戦のソフトバンク戦。相手先発投手は、赤星が苦手とする杉内俊哉だった。
そこで岡田彰布監督から「どうせ打率を下げるだけだから、試合を休め」と指示された赤星は、不本意ながら承諾する。だが、8回に代走として出場。1点差で迎えた9回、回ってきた打席で逆転の2点タイムリーヒットを放ち、見事、勝利に貢献。結果的に途中出場で勝利の立役者となったわけである。
そして試合後のお立ち台。ただ、たまたまこの時、使用されたマイクがテレビ用だったため、音声が球場には流れていなかった。するとある観客から「お前のしゃべってる声、聞こえねぇんだよ!」とヤジが飛ぶ。しかも一度ならまだしも、二度、三度と…。
そして3つ目の質問を受けたタイミングで、同じ客から「お前、いい加減にしろよ! 聞こえねぇつってんだろ!」とまたもや罵声が飛んだ。さすがに我慢できなかった赤星は、こう怒鳴り返したのである。
「入ってねえんだよ、この野郎、お前よー!」
スポーツ紙記者の話。
「本人としては『マイクの音声が入ってないんだから、聞こえなくても仕方ないだろ』という気持ちだったのでしょうが、さすがにお立ち台でのヒーローインタビューでブチ切れる選手は珍しい。そんなことから『何が入っていないのか』が話題になり、アンチからは『バットにはコルクが入ってるぞ~』といった中傷が飛び出したことで、阪神ファンが激怒する騒ぎになりました」
かねてから短気というイメージがあり、チーム内では「チャッカマン」というあだ名が付けられていた赤星。甲子園球場で行われた別の試合でも、野次を飛ばし続けた観客に、試合終了直後、
「そっちに行くから待ってろ。警備員、止めておけ!」
と激怒。だが、その客には逃げられ、警備員に「なんで引き止めねえんだよ」とブチギレた、というのは有名な話だ。前出・スポーツ紙記者は、
「ただ、引退後に発売したイラスト入りのLINEスタンプの中には『入ってねーんだよ』『チャッカマン』のスタンプを入れるなど、本人もこの騒動を完全にネタにしていますからね。損して得取れ、転んでもただでは起きないということです」
なお、会員限定配信のラジオ番組「赤星憲広の入ってねぇーんだよ!」が好評オンエア中なので、気になる人はチェツクしてみるといいかも。
(山川敦司)