昨年の「女芸人No.1決定戦 THE W」の優勝決定戦で、3組のネタが全て下ネタ絡みだったことが批判を浴びた…そんな「事件」はまだ記憶に新しいことだろう。
かくいう私も、実際に見ながら眉をひそめたクチだ。いや、なにも下ネタがいけないなどとは言わないし、個人的には下ネタが大好きだ。ただし、下ネタで人を笑わせるのは非常に難しいのだ。なぜなら下ネタとは時に、芸術性すら感じさせるほどの技術や、無駄に想像力をかき立てるワードセンスがあってこそ成り立つものだから。それこそ、どぶろっくの歌ネタや、ルシファー吉岡のコントのように、である。いやほんと、ルシファー吉岡って、今みたいな時代じゃなかったら、もっと売れていると思うのだが…。
じゃあ女は下ネタをやってはいけないのか、というと、そんなことはない。ただ、女がやると妙に生々しくなってしまうのがいけないのだ。なぜだろう。本人達は「そんなことはない」と否定するかもしれないが、どうも下ネタをやっている時、多くの女芸人から「男になんか負けない」というウーマンリブ感や、それとは逆に、隠し切れない羞恥心みたいなものがうっすらと醸し出されているように感じてならないからだと思う。これは決して男女差別ではない。ただ、そう感じるだけのことだ。
しかし逆に、性別を超越したバカバカしさ、突き抜けたテンションがあれば、女芸人の下ネタでもガッツリと爆笑を生むことができる。そう感じさせてくれたコントがある。
それは1月26日の「ぴったり にちようチャップリン」(テレビ東京系)で見た、オダウエダ。
「突如、街に現れた怪獣(音声のみ)に、女子高生に扮した植田が魔法少女に変身して立ち向かおうとするが、黒子のような衣装(色は雰囲気に合わせてピンク)を着た小田が、魔法少女のコスチュームに着替えさせようとするも、植田のぽっちゃりすぎる体型のせいでコスチュームをうまく着れず、肉襦袢を着てはいるものの、ほとんどスッポンポンの植田が四苦八苦する」
…というだけの内容なのだが、さすが「THE W」の2020年チャンピオンだけのことはある。気持ちいいまでに突き抜けたアホらしさと、植田の、お笑いのためにあるかのようなウルトラボディのお陰で、いやらしさなど皆無。ただただ、笑わせてくれた。
しかも植田はコント後に「同じネタを『キングオブコント』の予選で披露した際に、配信する上で植田のお尻の線が映ってしまっていたことを考慮され、モザイクをかけられてしまった」というエピソードを披露。さらに「それが技術の高いモザイクだから、逆に全裸に見えてました」と、変に隠そうとすると逆に卑猥になるいい例まで挙げて、笑いをとっていた。
そういえば、1月25日の「さんまのお笑い向上委員会」(フジテレビ系)の予告では、次週に島田珠代が登場するようで、明石家さんまの股の前に跪いて「珠代のドラゴン〝ボール″2つ発見!」とやっているのを見て、大笑いしてしまった。
恥も外聞もかなぐり捨て、代わりに勢いとバカバカしさを胸いっぱいに詰めた彼女たちのような芸人がやる下ネタは、やはりひと味もふた味も違う。だからコンプラだハラスメントだのとうるさい世の中でも、関係なく通用するのだ。
(堀江南/テレビソムリエ)