やっかいな問題が発生したようである。楽天から巨人に移籍した田中将大と若きエース・戸郷翔征の急接近を危ぶむ声が、早くも出始めているのだ。
田中は1月28日から、春季キャンプの地である宮崎での合同自主トレに参加。早速、戸郷を相手に、日米通算197勝を挙げた自らの投球術を伝授する「田中塾」を開いた。
「情報共有じゃないが、若いとか関係なしに、いろいろな価値観を持っている人と話ができればいいと思う」
とその趣旨を明かしたが、名球会入りまで残り3勝と迫るレジェンドの素早い行動に、若手投手が多く在籍するチームは早くも歓迎ムードだ。スポーツ紙プロ野球担当デスクが解説する。
「長年エースだった菅野智之がメジャーに移籍した。傍目には投手陣の精神的な役割も担っていたとされる菅野の離脱は大きなマイナスとなるイメージがありますが、実はそうでもありません。どちらかというと、菅野はそれほど面倒見がいいタイプではなかったので。自らの投球術や考え方を、積極的に教えるわけでもなかったですね。今回のような田中の振る舞いによって、投手陣は『田中派』になるかもしれません」
セ・リーグ連覇を狙う巨人にとってはメリットしかないように思えるが、やっかいな問題とはいったい何か。さる球団OBは、こんな不安を口にするのだ。
「田中の加入は功罪ある。ヤンキースで7年間プレーし、78勝している彼の存在は、メジャーリーグを目指す選手には憧れでしかない。チーム内のメジャー熱がさらに燃え盛っていく可能性は大でしょう」
その代表格が戸郷だ。戸郷は今年4月に25歳になり、メジャー挑戦にあたり、佐々木朗希のような「25歳ルール」には当てはまらなくなる。
「戸郷は自らが旬な時期にメジャー移籍して、高額契約を結びたい気持ちになって当然。ルール上、巨人はポスティングを容認しないこともできるが、今の日本球界の流れでは、FA権取得まで容認しないのは難しい時代になっている」(前出・球団OB)
巨人としては、戸郷への必要以上なメジャー情報注入は避けたいところだが、チームメートである田中との接触は止められない。
「田中に学ぶことは、戸郷には間違いなくプラス。ひいては巨人のためにもなるが、先々を考えると、早期にエースを失うという頭の痛い話になりかねない」(前出・球団OB)
なんとも難しい問題なのである。
(阿部勝彦)