2月5日に行われた将棋の第83期B級組9回戦で、深浦康市九段が伊藤叡王を撃破。深浦九段はここまで3勝5敗だったが、1勝を上積みしたことで、降級点回避が見えてきた。一方、敗れた伊藤叡王は7勝2敗となり、順位戦3位に後退。3月5日に予定される丸山忠久九段との対局に勝利すれば自力でのB1昇級となるが、丸山九段も6勝3敗で昇級がかかっており、どちらも絶対に負けられない一戦となる。
深浦九段は長崎県佐世保市出身の花村元司九段門下で、将棋ファンの間では「地球代表」の愛称で親しまれている52歳のベテラン棋士だ。「地球代表」とはもともと、ネットに書き込まれた「もし将棋星人が攻めてきて地球の運命を懸けて将棋を指すことになったら、地球代表は深浦でなく羽生だ」というジョークが始まり。ところが快進撃を続ける藤井聡太を深浦九段が立て続けに破ったことで、愛称として定着した。過去には王位を3期獲得したこともある古豪である。
伊藤叡王は昨年、同級生の藤井を破って八冠独占を終わらせた、将棋界の新星。昨年発表された第51回将棋大賞では優秀棋士賞、最多対局賞(69対局)、最多勝利賞(51勝)、升田幸三賞を受賞し、順位戦を破竹の勢いで駆け上がっている。
将来のA級昇格が見込まれる伊藤叡王だが、深浦九段に負けたことで、B1昇級の確率は90.73%から一気に60.70%に落ち込んだ。いまだ昇格は濃厚とされているものの「簡単には上がらせない」と、大きな壁となって立ちはだかったのが深浦九段だったわけだ。
ここまで4勝5敗と負け越している深浦九段だが、4勝のうちの2勝を伊藤叡王と、既に昇級を決めている服部慎一郎七段から上げている。
伊藤叡王、藤井七冠ばかりがクローズアップされる将棋界だが、ここぞの場面でのベテランの意地に、将棋ファンは感心させられたのではないだろうか。
(ケン高田)